ここにあるのは、50年間のかけがえのない思い出。

ベートーヴェンのシンフォニー6番(田園)、亡きご主人作のクラシックリスト……“オール・タイム・フェイバリット”について語るおばあちゃん(名曲喫茶「でんえん」店主)は、語り口こそ軽妙だったけれど、これまでの90年という人生の一部分を手のひらにのせて慈しむようでした。最後に挙げていただいたのは、たくさんの思い出が詰まったこの一冊。

新井富美子さん

昭和2年(1927年)7月24日生まれ。東京・国分寺の名曲喫茶「でんえん」オーナー。

#FAVORITE.03
 東京ノスタルジック喫茶店

新井富美子:好きな本といえば、10年くらい前に、こういう本を出して下さったんですよ(と言って、書棚から「東京ノスタルジック喫茶店」という本を取り出す)

いろいろな喫茶店が紹介されているんですけど、うちもずいぶん大きく出して下さってね。あんまりこういった取材ってイヤなんですけど(苦笑)、お店も50周年の頃だったのでせっかくだからと思って。すごく丁寧に話を聞いてくれて、本にまとめてもらいました。

(掲載されている写真を指差して)これは主人と私が若かった時、このお店をスタートした頃ね。そう、がっしりとした大柄な人だったの。人相は良くないけどね(笑)。これは前にお話しした美人ウェイトレスですね。タカラジェンヌみたいな人もいたんですよ。見てるとね、いろいろと思い出しますよね。

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 ――お店には本もたくさんありますね。

新井:お客様からいただいたものもあるけど、ほとんど主人のものなんです。とっても本が好きだったんですよ。

 ――ご主人はどんなジャンルの本がお好きで?

新井:文学書と、写真集とか、いろいろ好きでしたね。私も、若い頃はよく本も読みましたよ。「アンネの日記」とか「風と共に去りぬ」とか。昔のことなので内容はよく覚えてませんけど(笑)。

 ――この本にあるような老舗の喫茶店とは、やはりつながりがあって?

新井:昔はうちみたいな名曲喫茶ってたくさんあったんですけど、ほとんどなくなってしまいましたね。中野とか、高円寺とかにもありましたけど。

 ――中央線には古くからの喫茶店が多いイメージがあります。

新井:そうね。主人も中央線沿いに出したかったみたいで。やっぱり都内寄りは家賃が高いですよ。西へ来るほど安いですから。立川駅は家賃がもっと安いじゃないですか。それでまぁ、この辺にしておこうと思って国分寺にしたんじゃないですか。

 ――何かゆかりがあったわけではなく?

新井:特にないんですよ。ここが貸店舗で出てたんですね。ところが十何人見にきて借り手がなかったんですって。それで大家さんが根負けして、家賃はどうでも良いから借りてくださいとおっしゃったの。それでここに決めたみたい。幸か不幸か。

 ――今では国分寺の代名詞のような喫茶店ですし。

新井:もう60年ですからね、よくやりましたよね。本当に。それで、こういう本を出してくださって感謝しています。いい記念ですよね、とっても。

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Photo by Akihiro Okumura(TABI LABO)
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