【年間50億本】バナナのフードロスに「まった!」をかける、 たった1枚の紙

スーパーの棚に並ぶ色とりどりの野菜や果物たち。その裏側では、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されていく食品が後を絶たない。 

こうした状況から、本来廃棄処分になってしまう商品を安く販売する「訳アリ品」や「規格外品」を、積極的に手に取る人も多いのではないだろうか。しかし最新の実験では、そのような消費行動を行わずともたった「1枚の紙」でフードロスを削減できるかもしれない可能性が浮上した。

あなたは「寂しいバナナ」、買いますか?

ドイツのスーパーマーケットチェーン「Rewe」では、バナナ売り場で慢性的な食品ロスが発生していた。買い物客は自分が欲しい本数分のバナナを購入するために、棚にある房からもぎ取って購入していく。その結果、もぎ取られてしまったバナナは次第に売れ残り、最終的に廃棄処分になっていたのだ。

香港メディア「Green Queen」によると、イギリス・バース大学の教授らの実験では、残されてしまったバナナの棚に「私たちは寂しい独身者です。私たちも買ってもらいたいです」という文章と、泣いているバナナのイラストを追加した貼り紙を提示したところ、販売数が58%も増加したという。

毎年廃棄されるバナナの数は、驚くほど多い現状。ある統計によれば、イギリスでは消費者の30%が、バナナに小さな傷や黒い斑点があるだけで廃棄、13%はまだ熟していない緑色の兆候でさえ廃棄しているとのこと。

これは、まだ食べられるバナナ140万本が毎年ゴミ箱行きとなり、日本円にして155億円超の損失につながっているということ。さらに、米国では毎年50億本のバナナが廃棄されているんだとか。

なぜ人は「寂しいバナナ」に惹かれるのか?

この驚くべき実験結果は、食品に感情移入することで購買意欲を高める「擬人化マーケティング」の一例と言えよう。

同記事によると、同大学のLisa Eckmann氏は「誰しも、孤独を感じたくないという欲求を持っている。"寂しい独身バナナ"に悲しみを投影することで、買い物客から共感を得やすくなり、購買意欲の向上につながったと考えられる」と考察している。

つまり、「寂しいバナナ」を選ぶことは、単なる食品の購入ではなく、共感や倫理的な消費行動として消費者の心を満たしているのだ。

食品ロス削減への新たな可能性

近年、消費者のあいだでは環境問題や社会貢献への意識の高まりから「エシカル消費」や「SDGs消費」といった言葉が注目されている。 今回の「寂しいバナナ」の事例は、これらのキーワードとも深く関連しており、消費者の共感や感情に訴えかける「エモ消費」という新たなトレンドを示唆していると言えるだろう。

食品ロスは日本でも年間約25万トンにも上り、世界的に見てもかなり深刻な問題だ。 「もったいない」という気持ちを行動に移すためにも、「エモ消費」は有効な手段となり得る。

食品を選ぶ際には、価格や見た目だけでなく、その背景にあるストーリーや社会的な意義にも目を向けてみてはいかがだろうか。

Top image: © iStock.com / Diy13
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