半世紀以上、おばあちゃんが大切にしてきたもの。
“オール・タイム・フェイバリット”なものを紹介していただく週替わり連載企画。今週は国分寺にある名曲喫茶「でんえん」、その御年90歳になる店主が登場。前回ご紹介いただいたベートーヴェンの「田園」に続く、おばあちゃんのお気に入りは…?
新井富美子さん
昭和2年(1927年)7月24日生まれ。東京・国分寺の名曲喫茶「でんえん」オーナー。
#FAVORITE.02
亡きご主人作のクラシックリスト
新井:これは主人が作ったもので、好きなものというか、大切なものですよね。お店には必要なものだし、これがないとお客様のリクエストに応えられませんから。
音大生の方なんかが、よくこれを見にいらっしゃるんですよ。卒論を書くための資料にするんですって。というのは、これはね、例えばベートーヴェンだったら年代も書いてあるわけ。ベートーヴェンとかバッハとかモーツァルトとか、有名な作曲家は全部リストになってます。
これがないとね、私は(レコードを)探せないんですよ。ここに番号が書いてあるから。
――丹念にびっしり記入されていて、几帳面な性格と音楽への愛情が伝わってくるようです。
新井:専門家とかじゃなくて、ただ好きだったんですよね。主人はいろいろ勉強もしてましたよね。こういう仕事をはじめたからにはね。
今お店に置いてあるのが2冊目(上の写真)で、初代のものもありますよ(と言ってタンスの奥から引っぱり出してくれたのが、こちら)。
――さらに年季が入ってますね!大切に取ってあるんですね。
新井:そうですね。今年でうちは60年ですから、60年前に作ったものです。これは主人だけじゃなくて、当時のウェイトレスの方とか3、4人で書いていたと思います。
もともとお店にあったレコードは30枚くらいだったんです。今は1,000枚ぐらいありますけどね。それが全部リストになっているから、貴重なものですよね。
(次回につづきます。前回はこちら)
Photo by Akihiro Okumura(TABI LABO)