「白人」の定義が変わる?アメリカ「人種・民族」統計基準が改訂
あなたは「白人」と聞いて、どんな人を思い浮かべるだろうか。
きっと思い浮かべたであろう人々。米国の新たな取り組みにより、その概念が少し変わってくるかもしれない。
3月28日、アメリカ合衆国行政管理予算局(OMB)が、連邦政府および国勢調査の回答用紙において、「人種・民族」を回答する箇所に「Middle Eastern or North African (中東または北アフリカ系)」、「Hispanic or Latino(ヒスパニックまたはラテン系)」の選択肢を追加することを発表した。
これまで、上記の人々は統計における「白人」に分類されてきたが、自認するアイデンティティと異なることから、独自のチェックボックスを設けるよう長年政府に働きかけていたという。
人種・民族に関する統計基準の変更は、実に27年ぶり。この決定は、アメリカにおける「白人の定義」を大きく覆すものだ。
ただし、肯定的な意見だけでなく、懸念の声も上がっている。
まず、「ラテン系」を新たな人種とすることで、黒人のラテン系住民がエスニック・グループ内で受ける差別が見えづらくなるおそれがある。
また「中東・北アフリカ」がどの地域を指すかについては、国際的合意のとれた正式な定義は未だに存在しない。これを放置すれば、地域の区分に関する未解決の問題が加速する可能性も危惧されている。
この変更が適用されるのは、2030年の国勢調査から。
政府は、これらの変更が連邦政府機関間のデータをより詳細に分析し、国内の多様性を尊重したサービスにつながることを望んでいる……が、その効果はいかほどか。ただ、ようやく議論のレベルが上がったという意味では、世界的にポジティブな進捗と言えるかもしれない。
多様性と共に、個別のアイデンティティの尊重が加速する昨今。分類や呼称など、私たちが普段使う「大きな主語」が、個人のアイデンティティやストーリーを消してしまっていないか?
丁寧に紐解き、考えていきたい。