今年体験すべき「現代の青春」がここに。あの傑作が、新章をスタート

日本中にかるた旋風を巻き起こしたあの漫画に、再び熱い視線が注がれている。

そう、累計2800万部突破の大人気青春かるた漫画『ちはやふる』、その続編が発表されたのだ。

新シリーズ『ちはやふる plus きみがため(以下きみがため)』のコミック第一巻が、4月12日に発売。話題性は言わずもがなで、一ヵ月も経たないうちに重版が決定した。

©株式会社講談社

月刊誌『BELOVE(ビーラブ)』で連載中の本作の舞台は、前作主人公の千早たちが卒業してすぐあとの瑞沢かるた部。部内でたった一人のA級選手となった長良凛月(ながらりつ)が、様々な悩みを抱える仲間と共に全国制覇を目指す成長物語だ。

ヒット作の続編には「前作は良かったのにこれは残念」なんて話がつきものだが、『きみがため』は例外。

「久しぶりのワクワク感がヤバい!」「ちはやふるを知らない人でも楽しめる!」と、前作ファンたちも大絶賛。既に、多くの人が沼っているようだ。

同じ題材、でも違う“青春”

本作について、筆者の末次由紀氏はこう語る

『ちはやふる』では、自分がやりたいことに思いっきり邁進し、夢に向かって突き進む学生たちを描いてきました。でも今は「そんなに恵まれた子達ばかりだろうか? 青春はもう贅沢品なんじゃないか?」と感じています。

前作と同様に「かるた漫画」であることには変わりないが、『きみがため』が描くのは、煌びやかな理想系の青春ではない。

主人公の凛月は母を亡くしており、幼い妹の面倒を見ながら高校生活を送る青年で、千早たちのように大好きなかるたに常に没頭できるほど恵まれていない。他のキャラクターたちも壮絶な過去を経験していたり、親との関係で悩んでいたりと、苦しい状況の中で必死にもがいている。

凛月たちが見せてくれるのは、容姿端麗で成績優秀、家庭環境にも恵まれている『ちはやふる』のキャラクターたちでは語れなかった、“リアルで深い青春”なのだ。

そもそも“青春漫画”って……

さて、『きみがため』のキャッチコピーとして使われたのは、「青春かるた漫画の金字塔」という言葉。

ストーリーを踏まえても、この文言は作品をよく表していると言える。ただ、ここで気になるのが「青春漫画」とはどのようなものか、ということ。

辞書で「青春」の意味を調べてみると、

夢や希望に満ち活力のみなぎる若い時代を、人生の春にたとえたもの(出典:『新明解国語辞典[第七版]』)

(夢・野心に満ち,疲れを知らぬ)若い時代。(主として,10代の後半から20代までの時期を指すことが多い)(出典:『デジタル大辞泉』)

などと出てくる。

後者は単純に年齢を区切るものとして定義されているが、前者は物語や人生の記憶として連想される、いわゆる青春の姿。

『きみがため』は間違いなく定義を満たしているが、前作とは確実に形を変えた表現となっている──そう考えると、現代人が思い描く“青春”の姿も変化していることが窺える。

若者の恋や友情を描く漫画は一括して「青春漫画」とみなせるが、そこで繰り広げられる青春劇に、あなたは若かりし自分(または現在の自分)を重ねているだろうか。

または、自分では得られなかった“あの青春”のような空気感を、キャラクターへの感情移入を通して体験するか。

末次氏が語るように、これまで言われてきたような「キラキラした青春」は、現代では贅沢品かもしれない。そんななかで、我々が「青春漫画」に求めるものとはなんだろう。

キラキラだけではない、未熟で泥臭い、辛くて苦い思い出もきっとあるはず。人の数だけ青春は存在する。

これまでとは違う視点で、ある意味“現代らしい青春”を描く『きみがため』のような作品は、新しい青春漫画を定義するマイルストーンとなるのかもしれない。

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