Z世代はなぜ、読書を「時間のムダ」と考えるようになったのか?
スマホやSNSの普及により、膨大な情報が瞬時に手に入る現代。そんな時代において、じっくりと時間をかけて本を読むという行為は、Z世代にとって「時代遅れ」の烙印を押されてしまうのだろうか?
米誌「The Atlantic」に掲載された記事によると、近年、アメリカの大学では長編小説を読みこなせない学生が増加傾向にあるという。コロンビア大学の教授陣からは「一学期に複数冊の課題図書に圧倒される学生が多い」「難解な概念に直面すると、思考停止に陥ってしまう学生もいる」といった声が上がっているとも。
Z世代の「時間感覚」は
これまでの世代と何が違う?
従来の“若者の読書離れ”の原因は、集中力や読解力の低下といった、いわゆる「能力不足」に焦点が当てられることが多かった。しかし、同記事は、Z世代の読書離れの背景に、もっと根深い価値観の変化があることを指摘している。それは「時間対効果」、つまりタイパの重視だ。
1971年には、アメリカの大学生の73%が「有意義な人生哲学を育むこと」を大学進学の目的としていた。ところが、2015年にはその割合は47%にまで減少。反対に、「経済的に豊かになるため」という目的を掲げる学生は、同時期に37%から82%に増加した。「大学は役には立たない」といった高等教育不信のトピックスを紹介したことも記憶に新しいが……。現代の若者にとって、大学は「人生の意義」を模索する場ではなく、「将来のキャリア」のための準備期間としての色彩を強めていると言えるだろう。
就職活動に有利な資格取得やインターンシップなど、「目に見える成果」を求めるZ世代にとって、すぐに結果が見えにくい読書は、優先順位が低くなってしまうのも無理はないのかもしれない。専門性の高いコースが重視され、人文科学系の勉強をおろそかにする風潮が記事でも指摘されている。
「効率化」と「即効性」を求める時代に
私たちは何を失いつつあるのか?
近年、ビジネスの世界では「生産性向上」や「業務効率化」といった言葉が飛び交い、プライベートの時間においても、スキマ時間を利用した「効率的な学習方法」や「短期間で結果を出すダイエット法」などが注目を集めている。
もちろん、限られた時間の中で最大限の成果を上げることは重要。しかし、目先の効率や即効性ばかりを追い求めるあまり、本当に大切なものを見失ってはいないだろうか?
小説の世界に没頭することで得られる豊かな感性や、歴史書を読み解くことで培われる多角的な視点は、AI時代を生き抜くための強力な武器になるはず。
「読書は時間のムダ」と決めつける前に、まずは一冊、あなたの手元に眠る本を開いてみてはどうだろう?ページをめくるたびに広がる未知の世界は、きっとあなたの心を揺さぶり、人生をより豊かにしてくれるはずだから。
👀 GenZ's Eye 👀
コスパやタイパを重視するあまり見落としてしまいがちなのは小さな幸せなのではないでしょうか。文章の美しさに触れ、新たな価値観に出会い、今見えている世界が変わっていく。そんな体験とともに本を読みながらゆったりと流れていく時間の中に幸せを感じたい筆者です。