アメリカで加速する「排除の波」。いま図書館で起きていること
お気に入りの本を読み返す、カフェで話題の漫画に熱中する。そんな当たり前の日常が、失われる日が来るかもしれない。米国では今、学校や図書館から特定の書籍を排除しようとする動きが、大きな波となって押し寄せている。
日本語版ナショナル・ジオグラフィックの記事、「学校や図書館で禁書の申請が過去最多、何が起こっている?米国」はこの排除の波について説明している。
検閲の嵐
急増する「閲覧制限」要請
「ナショナル・ジオグラフィック」が報じる。米国図書館協会の報告によると、2023年に閲覧制限の申し立てを受けた書籍は、じつに4240タイトル。前年から65%も増加し、過去最多を更新したという衝撃的な事実だ。さらに、その多くがLGBTQ+や人種マイノリティの視点を描いた作品であるという点は見逃せない。
標的にされる「多様性」
歴史に学ぶ、検閲の変遷
歴史を紐解けば、書籍の検閲は常に、時代の「タブー」と隣り合わせだった。1650年のアメリカ。ある宗教家の小冊子が発禁となり、焚書の憂き目に遭う。時は流れ19世紀、今度は奴隷制を告発した小説『アンクル・トムの小屋』が、激しい批判に晒された。そして現代。私たちは再び、「多様性」を認めようとしない“社会の歪み”に直面しているのかもしれない。
見えない壁
デジタル世界の「検閲」とは
近年、懸念されているのが、インターネット上における「見えない検閲」だ。ソーシャルメディアなど、誰もが情報発信できるようになったいっぽうで、プラットフォーム側による独自の基準で、特定のコンテンツが削除・制限されるケースも増加している。
たとえば、ある意見を発信したことでアカウントが凍結されたとしよう。それは、あなたの表現の場が一方的に奪われたことを意味する。検閲は、もはや図書館や書店のみに留まらない。デジタル空間においても、自由を脅かす影が潜んでいると言わざるを得ない。
「知る権利」を守ること:対話と理解から始まる未来
では、この複雑化する現代社会において、私たちはどのように「表現の自由」と向き合っていけばいいのだろうか。重要なのは、一方的な情報に流されることなく、多様な意見に触れ、自ら考え、判断する力を養うこと。そして、異なる価値観を持つ他者と対話し、相互理解を深めていくことが重要となる。
インターネット時代に生きる私たちは、膨大な情報に日々触れている。そのなかで何が真実で、何が偏った意見なのかを見極める「情報リテラシー」を身につける必要性が高まっていると言えるだろう。
あなたの「いいね」が、誰かの沈黙を生み出していないだろうか? 今一度、自分の胸に問いかけてみたい。
👀 GenZ's Eye 👀
その時代のタブーを扱った作品こそ、表現の自由による保護の対象である。人類史において特定の思想とこれに基づくタブーが多数派と少数派を形成し、これがどのように人々を苦しめてきたのかを振り返れば、その理由がわかるはず。