「大学は役に立たない」アメリカを襲う、高等教育不信の波
新学期が始まる季節ですが、「大学に行く意味って、本当にあるのかな?」「大学に行った意味って、本当にあったのかな?」そんな漠然とした不安を抱いたことはないでしょうか。
グローバル化やテクノロジーの進化、かつてないスピードで変化する現代社会において、高等教育のあり方が問われています。 そして、その波は遠く離れたアメリカにも、確実に押し寄せているようで……。
”高学歴ワーキングプア”の存在
アメリカを拠点にさまざまな分野に関する世論調査を行う「Gallup」が、2024年7月に発表した調査結果は、じつに衝撃的なものでした。
アメリカ人の高等教育機関への信頼は、どうやらこの10年で大きく揺らいでいるようで、「非常に/かなり信頼している」と回答した人の割合は2015年には57%だったのに対し、2024年には36%にまで低下。もはや3人に1人しか、高等教育に希望を見出せていないという状況のようです。
高等教育不信の大きな要因のひとつは、高騰する学費。大学進学にかかる費用は、年々増加の一途をたどっています。学生たちは高額な授業料を支払うために、多額のローンを組まざるを得ない状況なんだそう。しかし大学を卒業したとしても、必ずしも高い収入を得られるわけではありません。学生ローン返済に苦しむ「高学歴ワーキングプア」も増加しており、現在、深刻な社会問題となっています。
「大学に行けば、明るい未来が待っている」といったかつての常識は、通用しないのかもしれませんね。単に高収入の仕事に就くことだけでなく、高等教育の目的が社会貢献や自己実現といった多様な価値観と結びつけられるようになってきていることも大きいでしょう。
高等教育の価値を見出すために
これからの私たちに必要なこと
アメリカにおける高等教育の現状は、私たちに多くの問いを投げかけます。もちろん、日本にも高学歴ワーキングプアは存在し、文部科学省の「令和4年度学校基本調査」によると、修士課程修了者の就職率は76.1%、博士課程修了者の就職率は69.3%となっています。 この数字から、大学院を卒業するほどの知識や学力を持ちながら就職がかなわず、非正規雇用や無職になる人が一定数いることが読み取れます。
学費の高い大学はどのような価値を提供すべきなのか?真に「学ぶ」意味とは何なのか?これらの問いに対する答えは、すぐに出せるものではありません。
しかし、ひとつだけ確かなことは、生涯にわたって自ら学び続ける姿勢を持ち続けることが、これまで以上に重要になっているということ。日本も少子高齢化、経済の停滞、テクノロジーの進化など、さまざまな課題に直面しています。こうした変化の時代を生き抜くために、高等教育に価値を見出すために、私たちは、自ら学び、考え、行動し続けていく必要があるはずです。