世界でもっとも「教育的な」メタルバンドが面白すぎる
フェイクニュースの時代への特効薬は、ヘビィメタルかもしれない──。
スウェーデンと聞けば、優れた民主主義体制に政府による充実した社会保障、国連への貢献、高い学問水準など、とにかく平和的で進んだ社会として有名だ。
そのスウェーデンが、ヘビィメタルに傾倒しはじめているらしい。
同国のNPO教育機関「Swedish Skeptics Association(Vetenskap och Folkbildning、以下VoF)」が、毎年発表している「Enlighter of the Year Award」の2022年版を発表。
Enlighter、すなわち啓蒙を与えるような教育的な存在を表彰するための賞なのだが、今回受賞したのは……
なんと、ヘビィメタルバンドの「Sabaton」。
ヘビィメタル。ロックの中でも大衆性やエンタメ性の強い、良くも悪くも“わかりやすい”音楽の一つだ。
ただし、Sabatonのロックは一味違う。
彼らが作り上げるのは、「ウォーメタル」や「ミリタリーメタル」と呼ばれるかなり独特な音楽。
その名の通り、これは戦争や英雄などの歴史をテーマにしたメタルのことで、名前とは裏腹に決して過激なものではなく、むしろ史実に基づいたかなり知的な音楽なのだ(ちなみに、名前のサバトンとは中世に鎧として使われていた鉄の靴のこと)。
しかも、彼らは楽曲の制作にあたって専門家や歴史家を訪ね、正確な歴史を綴れるように努めているのだそう。ひたむきに戦史を調査し、その壮惨さや兵士らの英雄性を讃える音楽を作り続けている。
歴史への真摯な姿勢が評価され、ついにSabatonは「優れた教育者」として認められたというわけだ。
そんな彼らが手掛けているのは、帝政時代のスウェーデンの戦いやノルマンディー上陸作戦といった戦史、さらには中国の『孫子の兵法』など、幅広い史実をテーマとしたコンセプトアルバムの数々。
明治日本の西南戦争をフィーチャーした『SHIROYAMA』という楽曲もある。こう聞くと、メタルに興味がない人でも関心が湧いてくるのでは?笑
実際に聴いてみると、教育的な内容でありながらもしっかりとヘビメタしてるのが面白い。これだけ“分かりやすい”音楽だからこそ、多くの人に学びを与え、そして愛されているのだろう。
かつて若者への抜群の影響力を誇ったロックという音楽。メタルキッズというと悪ガキのようで聞こえが悪いが、彼らのようなバンドに傾倒することはかえって教育的なのだ。
知識に飢えた賢者たちよ、メタルにハマれ!
これが、先述したノルマンディー上陸作戦をテーマにしたアルバム。Sabatonの2番目の作品で、斬新な内容と無骨なボイスで高評を得たそう。
ちなみにタイトルの『Primo Victoria』は「偉大な勝利」を意味する語。