ポップ・アートの旗手が作品に込めた「平和」と「自由」へのメッセージ

キース・ヘリングの作品を通して世界が抱える課題に向き合い、現代における“平和”や“自由”の意味について考える展覧会「Keith Haring: Into 2025 誰がそれをのぞむのか」が、中村キース・ヘリング美術館にて開催される。

会期は2024年6月1日(土)〜2025年5月18日(日)。

ポップな作風に込められた
「平和」と「自由」へのメッセージ

©中村キース・ヘリング美術館

明るく軽快な作風で知られるキース・ヘリングだが、その根底には社会を鋭く洞察する眼差しがあったという。とくに、激化する冷戦を前に世界がかつてない数の核兵器を保有していた1980年代、ヘリングはアートを媒体としたさまざまな手法で反戦・反核へのメッセージを投げかけていた。

©中村キース・ヘリング美術館

同展では、ニューヨークでおこなわれた史上最大規模といわれる反核デモに際し、セントラルパークで無料配布された「核放棄のためのポスター」(1982年)をはじめ、チェックポイント・チャーリー博物館の依頼を受けベルリンの壁に描いた壁画(1986年)のドキュメント写真、ウィリアム・S・バロウズ(1914-1997)の10篇の詩に併せて混沌とした世界を描き出した版画シリーズ『アポカリプス』(1988年)などの作品群が展示。

1987年、東京都多摩市の複合文化施設「パルテノン多摩」の開館にあたり招聘された際に500人の子どもたちと制作した『平和Ⅰ-Ⅳ』『マイ・タウン』『サウンド・ツリー』も登場する。

©中村キース・ヘリング美術館

ヘリングは1988年、原爆養護ホーム建設のためのチャリティコンサート「HIROSHIMA ’88」のメインイメージを手がけたことから広島に。原爆ドームや広島平和記念資料館を訪れ、戦争の悲惨さを目の当たりにし、平和への想いを形にすべく壁画制作を申し出た。このプロジェクトは実現しなかったが、今まで調査されてこなかったその訪問の経緯や足跡も紹介されるという。

なお、本展の副題『誰がそれを望むのか?』は、平和記念資料館を訪れた後に日記に残していた「誰が再び望むのだろうか?どこの誰に?(原文:Who could ever want this to happen again? To anyone?)」という言葉に着想を得ているそうだ。

©中村キース・ヘリング美術館
©中村キース・ヘリング美術館

今も世界では戦争や紛争が絶えない。1万2000発にのぼる核兵器も存在すると言われている。ヘリングの作品に触れることで、これらの問題を他人ごとではなく、いま一度自分ごととして捉える契機にしてみてはいかがだろう。

『Keith Haring: Into 2025 誰がそれをのぞむのか』

【会期】2024年6月1日(土)〜2025年5月18日(日)
【開館時間】9時〜17時※最終入館:16時30分
【休館日】なし
【公式サイト】https://www.nakamura-haring.com/

Top image: © 中村キース・ヘリング美術館
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