「オス・メスを産み分ける生物」が発見。月の周期を利用するらしい

ハチやアリは、生まれてくる子どもの性別を操れるとされている。そんなオスとメスの産み分けは、魚の世界でも見られるらしい。

月の周期を利用してオス・メスを産み分ける魚が発見される

「ヴィクトリア大学ウェリントン」のJeff Shima教授の研究によると、セナスジベラというサンゴ礁に生息する魚は月の周期を利用してオスとメスを産み分けているらしい。これは、子孫の生存の可能性を最大限に高めるために行われているそう。

セナスジベラの子どもは新月に生まれると生き残る可能性が最も低く、満月の時期に生まれると生存確率が高いとのこと。ところが、セナスジベラが最も頻繁に産卵するのは新月のときだという。

なんだか矛盾しているようにも思えるが、これはセナスジベラの生存戦略。同教授によると、新月に生まれた子どもはオスになる可能性が高いらしい。セナスジベラはオスのほうがより多くの子どもを残せるとされているため、全滅のリスクが高くても新月を選んで産卵すると考えられるそうだ。

ただ、新月のときだけ産卵していると、子孫の生存の可能性が低下してしまう。そこで、セナスジベラはリスク分散しているという。「リスクの高い新月の産卵」と「リスクの低い満月の産卵」を組み合わせることで、オスになる可能性の高い個体数を維持しつつ絶滅も回避しているようだ。

人間の活動により「月の周期を利用した産み分け」ができなくなる可能性

Jeff Shima教授は「沿岸部の人工照明や気候変動による雲の変化などが月光に影響を及ぼし、月の周期を利用したオス・メスの産み分けが不可能になるかもしれない」と指摘している。セナスジベラは「新月と満月の産卵バランス」を何世代にも渡って調整してきたが、人為的な夜の明るさが原因でそのバランスが崩れてしまう可能性があるという。

ただ、夜間照明がセナスジベラをはじめとする海洋生物の生存や繁殖に与える影響はあまり認識されていないらしい。同氏は、海洋生態系を守るため「自然な夜の保護」の重要性を訴えている。

沿岸部の人工照明は安心感を与えてくれるし、工場夜景を楽しむこともできる。しかし、海で暮らす生き物たちと共存していくためには、沿岸部の夜の在り方を見つめ直す必要がありそうだ。

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