オス同士のマウスから、元気な赤ちゃんを誕生させることに成功!

「オス同士」のマウス2匹から、7匹の元気な赤ちゃんを誕生させることに成功したという、革命的な研究結果が発表された。

この実験は、大阪大学大学院の林克彦教授らを中心とする研究チームによって実施されたもの。

彼らは以前の研究で、メスのマウスから採取した皮膚細胞を卵子へと変え、健康な子どもを出産させる方法を発見。そこで今回の研究では、オスの皮膚細胞でも同様のことができるかどうかを試した。

人間と同じく、オスのマウスはX染色体とY染色体の両方を持ち、メスはX染色体を2本持っている。

この染色体の差異を克服すべく、林教授らはオスのマウスの尾から皮膚細胞を採取し、どんな細胞にもなることができるiPS細胞に変化させた。

すると、約6%の細胞が自然にY染色体を失い、X染色体だけが残った状態になったという。この細胞に既存のX染色体を複製することで、本来はメスにだけみられるXX染色体を作ることに成功したそうだ。

くだんの染色体をもつ細胞を使って卵子を作れば、あとはもう一匹のオスの精子と受精させ、代理の母マウスの子宮に移植するだけ。

全630回の試行で、誕生した赤ちゃんはわずか7匹。成功率は1%強にとどまったが、生まれた子に特段異常はみられず、自分たちの子どもを作る生殖能力も備わっていたという。

将来的には、たとえばオスが1匹しか生存していない絶滅危惧種について、他の種に適切なメスの代理がいれば、瀕死の状態から蘇らせることも可能とのことだ。


そして気になるのはやはり、果たしてこの技術は人間にも適用可能なのか?ということ。

先月ロンドンで開催された「第3回ヒトゲノム編集に関する国際サミット」にて林教授は、「この技術が人間に使われるようになるには、いまだ多くの障害が残されている」と警告している。

人間で同様の技術を用いるには、倫理的な観点も含めてまだ遠い先の話となるだろう。それでも今回の研究結果は、男性のカップル、あるいは独身の男性でさえ、女性の卵子を必要とせずに子どもを産むことができるなど、新しい生殖につながる可能性を十分に秘めているといえよう。

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