「移動中の差別」からトランスジェンダーを守るライドシェア
およそ3万人のトランスジェンダーが生活するといわれる、パキスタン第2の大都市ラホール。そこに国内初のトランスジェンダー向けの学校が開校し、はや2年。同地にまた嬉しいニュースが舞い込んできた。
“移動中の差別”から当事者を守る
ライドシェア誕生
9月初旬より、トランスジェンダーおよび女性向けのライドシェアサービス「SheDrives」が運用を開始したそうだ。トランスジェンダー・女性に特化したライドシェアは国内初の試みで、乗客だけでなく運転手も女性、もしくはトランスジェンダーに限定。公共交通機関での移動中、当事者が差別や嫌がらせにあうリスクを最小限にするのが狙いだという。
移動が「大きなリスク」になる
トランスジェンダーと女性たち
人口2億4000万人のうち、推計50万人がトランスジェンダーとして暮らすパキスタンでは、イスラム教が広く信仰されている。敬虔な教徒の多い保守的な地域では、トランスジェンダーは偏見の目にさらされることも少なくなく、過去には当事者を狙った性暴力や殺人事件も起きている。
「AP通信」が報じたところによれば、とくに当事者たちが警戒しているのが、バスや電車での移動。公共交通機関の利用中に差別的な発言や悪質な嫌がらせにあうトランスジェンダーは後を絶たないようで、国内の権利団体はこれまでも改善策を模索してきた。
これは女性も同様でアジア開発銀行の調査によると、70%のパキスタン人女性が、電車やバスに乗車中(性的なものを含む)ハラスメントを受けた経験があると報告。そのうちの20%は乗務員によるものだったというから驚きだ。
ラホールが位置するパンジャーブ州では、州警察がトランスジェンダーと女性を対象に運転教習を特別に開講しているとのこと。民間だけでなく自治体も、彼らが安心して移動できる交通手段を増やそうと尽力はしている。
「SheDrives」CEOのFarooqi氏は、「ラホールでのサービス開始は小さなステップで、ほかの都市への拡大も検討している」と未来を見据える。パキスタン全土でピンクに彩られた車を見かけるようになったとき、この地から当事者たちの権利はもっと広がっていくに違いない。