バナナが朝食から消える日。迫る「クローンの限界」という危機
朝ごはんやおやつとして手軽に食べられるバナナ。スーパーで当たり前に手に入る王道フルーツだが、じつはそのルーツや未来を守るための挑戦は、私たちが想像する以上に壮大なものだった。
東南アジアで花開いた
バナナの多様性
バナナの起源は東南アジア、特に大陸部だとされている。フランス国際農業研究開発センター(CIRAD)の研究では、200以上のムサ種の標本を分析した結果、中国南部からベトナム、ラオスといった東南アジア大陸部が、バナナの多様化の中心地であることが判明した。
東南アジアの熱帯雨林気候は、高温多湿で植物の生育に適しているそうで、肥沃な土壌と豊富な雨量にも恵まれ、バナナにとっても楽園のような環境だったのだろう。多様な環境に適応し、進化した結果、現在私たちが知る個性豊かなバナナの品種が生まれてきた。
食卓からバナナが消える…?
危機の原因は「クローンの限界」
ところで、私たちが口にするバナナの多くは種子を作らない。そのため、1本のバナナから株分けで増やされた「クローン」のようなもの。クローンのバナナは、親と同じ遺伝子を持つため、病気や環境変化への耐性が低いという課題を抱えている。
実際に、現在、パナマ病という土壌伝染性の病気が世界中で猛威を振るっている。パナマ病に強い品種もあるが、味が劣るため、生産者は対応に頭を悩ませているのが現状だ。このままだと、私たちの食卓からバナナが消えてしまう可能性も否定できないという。過去には、グロスミッチェル種という品種がパナマ病の大流行によって壊滅的な被害を受け、市場から姿を消したという歴史がある。現在、主流となっているキャベンディッシュ種も、グロスミッチェル種と同じ運命をたどる可能性が危惧されているというのだから、ことの深刻さが伝わってくる。
未来への鍵は「野生種の力」にあり?
この危機を救うカギとして注目されているのが、野生種のバナナだ。栽培品種と比べて遺伝子的に多様性に富み、病気や環境ストレスへの抵抗力も強い。野生種を研究しその遺伝子を活用することで、病気にも強く、味も良い新しい品種が開発できる可能性を秘めている。
野生種のバナナを守ることは、未来の食料安全保障に貢献するだけでなく、生物多様性の保全にも繋がる。2023年12月に開催された「国連生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)」では、2030年までに陸と海の30%を保全するという目標「30by30」が採択された。野生種のバナナの多くが自生する東南アジアの森林保全は、この国際的な目標の達成にも貢献する重要な取り組みと言えるだろう。
👀 GenZ's Eye 👀
バナナという身近な食品にも危機が訪れている。バナナだけでなく、多くの食品に危機が訪れているのではないだろうか。私たちはひとりひとりが、消費という未来への投票をしていることを忘れてはいけない。