なぜ、ソウルの不動産市場はアジアの中でも”別格”なのか?

コロナ禍以降、リモートワークの普及や企業のオフィス戦略の見直しなどにより、世界のオフィス市場は大きな変革期を迎えている。従来の都心部の一等地にあるオフィスビルから、郊外や地方都市の高品質なビルへと移転する動きが加速し、多くの都市でオフィス空室率が上昇している現状だ。

「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」によると、2024年第2四半期の世界の平均オフィス空室率は17%に達し、パンデミック前の10%から大幅に上昇した。オフィス需要の減退は、不動産投資市場にも大きな影響を与えており、オフィスビルへの投資意欲は世界的に低下傾向にあるという。

東アジアの優等生
ソウルのオフィス市場は別格

しかし、そんな世界的な“オフィス離れ”の波に逆らっているのが、韓国の首都ソウルだ。アジア太平洋地域の大都市の平均オフィス空室率が15%近い中で、ソウルはわずか1.5%という驚異的な数字を叩き出している。これは、東京やシンガポール、香港といった他のアジアの主要都市と比べても圧倒的に低い水準。

さらに、ソウルのオフィス賃料は上昇傾向にあり、その勢いは衰えることを知らない。事業用不動産サービス会社「CBRE」によると、2024年第2四半期におけるソウルのグレードAオフィスの賃料は、前年同期比で15.4%も上昇している。世界的にオフィス需要が低迷し、賃料が下落傾向にあるなかで、ソウルのオフィス市場はまさに「別格」の様相を呈していると言えるだろう。

K-POPだけにあらず!
ソウルオフィス市場を支える2つの力

では、なぜソウルは世界的なオフィス離れの波に抗えているのだろうか?その要因として、2つの側面からの考察が必要となる。

ひとつは、韓国経済の底堅さだ。サムスン電子やLG電子といった世界的なIT企業を抱える韓国は、コロナ禍でも比較的安定した経済成長を遂げてきた。堅調な経済は、企業の業績を支え、オフィス需要の増加につながっていると考えられる。

ふたつめは、韓国企業独自のオフィス文化。韓国では、伝統的に上下関係を重視する文化があり、対面でのコミュニケーションが重要視される傾向がある。そのため、リモートワークが浸透した現在においても、オフィスでの共同作業やコミュニケーションを重視する企業が多い。

さらに、近年では、従来の固定席を廃止し、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)やフリーアドレスといった、従業員の働き方に合わせて自由に場所を選べるオフィス環境を導入する企業も増えている。このような柔軟な働き方への対応も、オフィス需要の維持に貢献していると言えるだろう。

賃貸住宅市場に眠る可能性
アジアの投資ホットスポットとなるか?

いっぽう、世界的にオフィス需要が低迷するなかで、投資家の関心は賃貸住宅市場へとシフトしている。CBREのデータによると、2019年以降、アメリカでは不動産投資活動のうち44%を賃貸住宅セクターが占めているのに対し、アジアではわずか6%にとどまっている。しかし、アジアでも人口増加やライフスタイルの変化に伴い、賃貸住宅需要は高まっており、今後の成長が期待されている。

ソウルも、賃貸住宅市場の成長ポテンシャルを秘めた都市の一つと言えるだろう。韓国では、若年層を中心に賃貸住宅に住む人が増加しており、高品質な賃貸住宅への需要は高まっている。また、前述したように、韓国経済の安定性も、賃貸住宅投資の魅力を高める要因となっているのではないだろうか。

グローバルな視点が投資の鍵

世界的な経済不安やインフレの影響は、当然ソウルにも及んでくるだろう。しかし、独自の強みを持つソウルの不動産市場は、今後も投資先としての魅力を失わないと考えられる。特に、安定収入が見込める賃貸住宅市場は、長期的な投資対象として注目に値するだろう。

激動する世界経済のなかで、ソウルの不動産市場は、その底堅さと成長性を兼ね備えた魅力的な投資先としての地位を確立しつつある。

👀GenZ's Eye👀

すこしリサーチしただけでも、近年ソウルでは安定した賃貸収入を求める機関投資家の参入が進んでいることが伺える。住宅賃貸市場も更なる成長が見込めるというが、ソウルの不動産市場が秘めるポテンシャルの高さを裏付けている証拠だろう。世界的なオフィス需要低迷に逆行するソウルの不動産市場。羨んでばかりはいられない……。

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