世界最高齢の鳥が問いかける「人生100年時代」の幸福論
「人生100年時代」と言われる現代、長寿はもはや夢物語ではなくなった。しかし、ただ長く生きればいいわけではない。誰もが、心満たされる人生を送りたいと願っているはず。そんななか、年齢を重ねてもなお、愛と挑戦に満ちた日々を送る老鳥がいる。74歳という高齢で卵を産んだ、コアホウドリの「Wisdom」だ。
世界最高齢の野鳥として知られるWisdomは、2023年、再び注目を集めることに。なんと、新しいパートナーを見つけ卵を産んだのだ。彼女は1956年にミッドウェー環礁で生物学者によって識別され、足環が取り付けられた。コアホウドリは5歳までは産卵しないとされており、このニュースを伝える「IFLScience」の記事によると、「米国魚類野生生物局」は彼女の年齢を少なくとも74歳と推定している。
60年の大恋愛を経て、新たなパートナーへ
Wisdomは、過去に「Akeakamai」というパートナーと60年間連れ添い、50~60個もの卵を産み、30羽もの雛を育てたと推定されている。まさに鳥界の“おしどり夫婦”。しかし、Akeakamaiは2021年以降巣に戻らなくなり、すでにこの世を去ったとみられている。
「毎年Wisdomが戻ってくるたびに、海鳥がどれだけの期間生き、雛を育てることができるのか、私たちは多くのことを学びました。世界中のバードウォッチャーに感動を与えるだけでなく、私たちがこれらの優雅な海鳥と、彼らが生き残るために必要な生息地を、どのようにして未来へと守っていくことができるのか、より深く理解するのに役立ちます」。こう述べたのは、米国魚類野生生物局の生物学者であるBeth Flint博士だ。
種の未来を託す、高齢出産の意義
Wisdomの行動は、私たちに多くの問いを投げかける。74歳という高齢出産は、自然界ではどのような意味を持つのか。それは種の存続を脅かすリスクなのか、それとも、過酷な環境を生き抜いてきた個体だけが持つ、貴重な遺伝子を残すための戦略なのだろうか。
Flint博士は「アホウドリは生涯パートナーを変えることはないと考えられているが、もし必要があれば、たとえば最初のパートナーより長生きした場合には、新しいパートナーを見つけることもある」とも述べている。Wisdomは、長い人生経験のなかで、愛するパートナーとの別れを乗り越え、再び未来へと羽ばたこうとしているのかもしれない。
Wisdomの物語は、私たちに「年齢を重ねることの素晴らしさ」を教えてくれる。それは、単なる時間の経過ではなく、経験と成長、そして新たな出会いに満ちた道のりであるということ。そして、何歳になっても、愛し、挑戦し続けることの尊さをも教えてくれているのではないだろうか。あなたにとって「心豊かな人生」とは、どんな人生ですか?