動物の幸福を考える「アニマルウェルフェア」とは?

アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは直訳すると「動物福祉」のこと。

動物(主に家畜)を飼育する際に注目されている考え方で、動物の心と体の健康を守ることで、動物の幸福度と持続可能な消費と生産を実現させようというものです。

今回はそんなアニマルウェルフェアの定義やその指標、事例について紹介します。

アニマルウェルフェアとは?

鶏の写真
©goodbishop/Shutterstock.com

アニマルウェルフェアについて、一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会は以下のように定義しています。

アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは、感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な生活ができる飼育方法をめざす畜産のあり方です。

日本語では「動物福祉」「家畜福祉」と訳されます。

アニマルウェルフェアは、家畜を工業的に扱うシステムへの批判を書いたルース・ハリソン著『アニマル・マシーン』(1964年、イギリスにて出版)によってヨーロッパに広がった概念。この本は畜産動物福祉にまつわるさまざまな取り組みを促すきっかけとなり、1979年に英国家畜福祉委員会で発表されたガイドライン「5つの自由」は、今日でもアニマルウェルフェアの重要な指標の基となっています。

動物たちの生活の質を保ちながら家畜動物を飼育をすることで、ストレスや病気が減り、結果的に、飼育をする際の生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながることが期待できます。

さらには、精神安定させるための薬剤などの投与が減ることで、食の安全にもつながると考えられているのです。

もともとは畜産業において使われることが多かったアニマルウェルフェアですが、近年ではファッション業界など食品業界以外にも広がっています。

アニマルウェルフェアの5つの指標

©iStock.com/PatrickPoendl

農林水産省が公開している資料では、アニマルウェルフェアの5つの指標について、以下のように定義されています。

  1. 飢え、渇き及び栄養不良からの自由
  2. 恐怖及び苦悩からの自由
  3. 物理的、熱の不快さからの自由
  4. 苦痛、傷害及び疾病からの自由
  5. 通常の行動様式を発現する自由

これらが損なわれることで、動物はストレスを感じたり、病気にかかったりするリスクが高まるとされています。一つひとつ順番にみていきましょう。

01. 飢え、渇き及び栄養不良からの自由

必要な食料や水分を摂取する自由が確保されているかを測るための指標です。適量の食料や水を与えることで、疾病の罹患を防ぐことができ、アニマルウェルフェアを保つことができます。また、食料に動物の身体にとって害があるものが含まれていないか確認してから与えることも重要。

02.恐怖及び苦悩からの自由

騒音などのストレスを感じるような環境に動物をおいたり、雑な扱いをされたりすることから動物を守る指標です。動物が痛みを感じるような要因や精神的な負担を感じる要因は排除することが求められます。

03.物理的、熱の不快さからの自由

動物が快適に感じる温度は人間と必ずしも一緒ではなく、更にその適温は種類によっても異なります。それぞれにとって快適な温度で過ごすことのできる環境が求められるのです。

04.苦痛、傷害及び疾病からの自由

動物を飼育する際には、手術などの痛みを伴う行為が必要となるときがあります。こうしたときには、動物が感じる痛みが最小限になるように配慮が必要です。

05. 通常の行動様式を表現する自由

家畜を群飼する際は、群内の家畜同士が敵対して緊張感が増さないよう留意することや、高い密度で飼育することの危険性について留意することが求められます。

また畜舎や輸送時の収容場所について、①突起物など家畜がけがをする原因がない構造であること、②床面は滑りにくい材質を用い、水はけを良くし、衛生的な状態を確保すること、③家畜が休息するための十分なスペースが確保され、立ち上がる等の正常な行動をとれる構造であること、④各畜種の習性に応じた十分な光量が確保されるよう、自然光に加え、照明を適切に使用し家畜に不快感を生じさせないようにすることも必要とされています。

日本のアニマルウェルフェア事情

ヨーロッパでアニマルウェルフェアという言葉が普及したのは1960年代。ヨーロッパでは、アニマルウェルフェアな畜産物や牛乳、乳製品が一般に流通しており、流通量が多いが故に手にとりやすい価格で販売されています。

しかし、日本ではまだ聞き慣れない言葉で、議論が活発になってきたのもオリンピックが開催されることが決まってから。外国人が日本の畜産物を消費することが予想されるため、日本でもアニマルウェルフェアの推進が求められているのです。

まとめ

アニマルウェルフェアの畜産物や牛乳、乳製品が日本のスーパーに普通に並ぶ日がくるのはまだ先かもしれません。ですが、これから製品やブランドを選ぶ際の一つの軸として「アニマルウェルフェア」が重要視されるようになっていきそうですね。

Top image: © iStock.com/kamisoka
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