「オーセンティック」とは?モノが溢れる時代に求められる「本物」の価値

スマートフォンやSNSの普及により、日々大量の情報に晒される現代。玉石混交の情報に疲れてしまい、本当に価値のあるものを求めている人も多いのではないでしょうか? そんな時代背景と相まって、近年さまざまな分野で注目されているキーワードがあります。それが「オーセンティック」です。

「オーセンティック」ってどんな意味?

「オーセンティック」…… 最近よく耳にするこの言葉、あなたはどう捉えていますか? ファッション誌で見かけたり、カフェのコンセプトに謳われていたり。なんとなく「本物」や「正統派」といったイメージは浮かびますが、実際にはどんな意味なのでしょう。

じつは、オーセンティックは時代や文脈によってその解釈が変化し、多様な意味合いを持つ言葉なんです。この章では、オーセンティックの語源や歴史を紐解きながら、現代における多様な捉え方を探っていきます。

語源から紐解く「オーセンティック」の真意

そもそも、オーセンティックの語源は、英語の “authentic”。 ラテン語の “authenticus” (権威ある、確実な)を起源とし、「本物の」「真正の」「信頼できる」という意味を持つ形容詞です。 つまり、模倣や偽物ではない、オリジナルの価値を持つもの、と言えるでしょう。

現代社会における「オーセンティック」の多様な解釈

大量生産・大量消費、そして情報が溢れかえる現代社会において、オーセンティックは単なる「本物」という意味を超え、より多様な価値観を反映するようになってきました。

伝統的な職人技が光る工芸品、環境に配慮したサステナブルな製品、あるいは作り手の想いが込められたクラフトビール。 現代におけるオーセンティックは、時代を超えて受け継がれてきたもの、質の高いもの、ストーリーのあるもの、そして自分にとって価値のあるものなど、幅広い解釈が生まれています。

「オーセンティック」と混同しやすい言葉との違い

オーセンティックと似た言葉に、「トラディショナル」「クラシック」「オリジナル」などがあります。これらの言葉も伝統や本物といったニュアンスを含んでいますが、オーセンティックとは微妙な違いが。

たとえば、「トラディショナル」は古くからの習慣や様式を重んじるもの、「クラシック」は時代を超えて評価される普遍的な価値を持つものを指すことが多いでしょう。 いっぽう、オーセンティックは、より個人的な価値観や審美眼に基づいた「自分にとっての本物という意味合いが強いと言えるでしょう。

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衣食住、身の回りの「オーセンティック」

オーセンティックという言葉は、ファッションライフスタイル、さらには旅行など、現在あらゆる分野で耳にするようになりました。それぞれの分野で、どのように「オーセンティック」が表現され、人々を惹きつけているのか、具体的な例を見ながら考えてみましょう。

ファッション:時代を超えて愛される「定番アイテム」

ファッション業界において、オーセンティックは、流行に左右されずに長く愛される定番アイテムやスタイルを指すことが多いと言えます。

たとえば、シンプルなデザインの白Tシャツ、上質な素材で作られたトレンチコート、機能性と耐久性を兼ね備えたデニム……。これらのアイテムは、時代を超えて多くの人々に支持されてきました。

食:「素材本来の持ち味」を楽しむシンプルな料理

食の世界におけるオーセンティックは、新鮮な食材本来の味を活かした、シンプルながらも奥深い味わいの料理を表現する際に使われます。

旬の野菜をシンプルに調理した一皿や、伝統的な製法で作られた発酵食品など。素材の持ち味を最大限に引き出すことで、体に優しく、心にも響くオーセンティックな食体験が提供されています。

ライフスタイル:自分にとっての「本物」

ライフスタイルにおいてオーセンティックであるということは、周りの意見に流されず、自分にとって本当に大切なもの、心地よいものを選び、自分らしい生き方をすることを意味します。

それは、自然と調和したシンプルな暮らしかもしれないし、都会の一室で自分の好きなものに囲まれた生活かもしれません。大切なのは、自分にとっての「心地よさ」や「豊かさ」を見つけることなのです。

旅行:その土地“固有の”文化や歴史に触れる

旅行においてオーセンティックな体験とは、観光地を巡るだけでなく、その土地固有の文化や歴史、人々の暮らしに触れる旅と言えるでしょう。

地元の人々が集う市場で買い物をしたり、伝統的な工芸品作りを体験したり、家族代々受け継がれてきたレシピを味わったり。ガイドブックには載っていないような、その土地ならではの「本物」の体験を求める人が増えています。

なぜ今、「オーセンティック」が求められるのか?

大量生産・大量消費、そして情報過多……。現代社会ならではの課題と向き合うなかで、人々はオーセンティックなものに何を求めているのでしょう?それは、一過性のトレンドではなく、もっと深い部分に根ざした価値観の変化を表しているのかもしれません。

大量生産への反動。「個性」と「特別感」を求めて

大量生産によって均一化された商品があふれる現代。私たちは、個性や独自性を表現できる、自分だけの特別なものを求めるようになってきました。

大量生産品にはない、手仕事による温かみ、一点物の特別感、そして歴史や伝統を感じさせる重厚感。こうした魅力を持つオーセンティックなものに、人々は惹きつけられているのではないでしょうか?

情報過多社会における信頼性への渇望

インターネットやSNSの発達により、日々膨大な情報が私たちに降り注いできます。しかし、その中には真偽の判別が難しい情報も少なくありません。

玉石混交の情報社会において、私たちは、根拠のある確かな情報信頼できる情報源を求めているのではないでしょうか。オーセンティックなものには、長い年月を経て培われてきた歴史や伝統、そして確かな技術や知識が裏付けられていることが多く、そこに信頼感を抱く人は少なくありません。

サステナビリティと未来への責任

地球環境問題への意識の高まりとともに、「サステナビリティ(持続可能性)」という考え方が、私たちのライフスタイルにも大きな影響を与え始めています。大量生産・大量消費を見直し、地球環境に配慮したものを選択するのは、もはや現代人の価値観のひとつ。

オーセンティックなものには、長く使い続けられる耐久性、修理しながら大切に使う文化、そして環境負荷の低い素材や製法といった特徴が見られることも。サステナビリティとオーセンティック。この2つのキーワードは、これからの時代において、より密接に結びついていくと言えるでしょう。

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ライフスタイルに取り入れるヒント

オーセンティックなものを、もっと日々の暮らしに取り入れてみたい。そう思ったあなたは、どんなことから始めればいいのでしょうか? 自分にとっての「本物」を見つけるためのヒントを、具体的なアクションと合わせてご紹介します。

本当に必要なものを見極める: シンプルライフへの第一歩

まずは、身の回りのものを見直し、本当に必要なもの、大切なものを見極めることから始めましょう。衝動買いを避け、流行に流されることなく、自分が本当に欲しいもの、長く愛用できるものを選ぶことが大切です。

質の高いものを長く愛用する
愛着と時間の積み重ね

安価なものを使い捨てにするのではなく、多少値が張っても質の高いものを選び、長く大切に使い続けることを意識してみましょう。 丁寧にメンテナンスをしながら、時間をかけて愛着を深めていく。その過程こそが、オーセンティックな価値を育むことに繋がるのではないでしょうか。

ストーリーに共感する
作り手の“想い”を感じる

商品やサービスを選ぶ際には、その背景にあるストーリーや、作り手の想いに目を向けてみましょう。作り手の情熱やこだわりが込められたものは、単なる商品以上の価値を持ち、使う人の心を豊かにしてくれるはずです。

自分にとっての「本物」を見つける旅へ

オーセンティックは画一的なものではなく、一人ひとりの価値観やライフスタイルによって、その解釈は異なります。色々なものに触れ、体験し、感じながら、自分にとっての「本物」を見つける旅に出かけてみましょう。

まとめ

現代社会において、オーセンティックであることは、自分自身の価値観を見つめ直し、本当に大切なものを選び取る、心の羅針盤のような役割を果たしてくれるかもしれません。

さあ、あなたも自分だけの「オーセンティック」を見つける旅に出かけてみませんか?

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