「ベーシックインカム」は、新しい自由へのパスポートになる?

「将来、仕事はあるのか」「このまま生活していけるか不安」……そんなモヤモヤを抱えているZ世代のあなたへ。AIや自動化の波は、私たちの働き方を大きく変えようとしています。従来の「会社に雇われて働く」というスタイルが当たり前ではなくなる時代が、すぐそこまで来ているのです。

そんななか、昨今注目されているのが「ベーシックインカム」。 政府が全国民に対して毎月一定額のお金を預金口座に支給するという、新しい社会システムです。 実現すれば、生活費の心配をすることなく、自分のやりたいことに挑戦できる社会になるかもしれません。ただ、本当にいいことばかりなのでしょうか?

本記事では、ベーシックインカムとは何かという基本的な解説から、メリット・デメリット、そしてZ世代にとってどんな未来が待っているのかを、わかりやすく解説していきます。

ベーシックインカムってどんな制度?

平たく言えば、ベーシックインカムとは政府がすべての国民に、最低限の生活を送るのに必要な金額を、定期的に無条件で支給する社会政策のこと。

年齢、性別、職業、就労意欲、収入の有無に関係なく、すべての人が平等に受給資格をもつ点が、従来の社会保障制度とは一線を画すポイントです。「働かなくてもお金がもらえるなら、誰も働かなくなるのでは?」という疑問を持つ人もいるかもしれませんが、その点は後ほど詳しく解説していきます。

ベーシックインカムが注目されるわけ
AI時代に必要なセーフティネット

ベーシックインカムが世界的に注目を集めている背景には、現代社会が抱える深刻な問題があります。 それは、AIや自動化の急速な進展です。

「世界経済フォーラム」の報告書「仕事の未来レポート2020」によると、2025年までに、自動化によって26ヵ国でのべ8,500万人の雇用が取って替られると予測されています。いっぽうで9,700万人の新しい仕事が生まれるとの推測も。

注目すべきは「雇用の変化」です。 AIやロボットが人間の仕事を代替する時代において、求められるスキルや働き方は大きく変化していくと考えられます。今まで通りの働き方では、生き残れない可能性もあるでしょう。

ベーシックインカムは、このような変化の激しい時代に、人々が安心して新しい仕事やスキルを身につけるための時間を確保したり、自分の才能や能力を活かした生き方を選択したりするためのセーフティネットとして期待されているのです。

世界で進むベーシックインカムの実証実験

ベーシックインカムは、まだ世界的に導入されているわけではありませんが、すでにいくつかの国や地域で実証実験が行われており、その結果が注目されています。

たとえば、フィンランドでは2017年から2018年にかけて、失業者2,000人を対象に、月額560ユーロのベーシックインカムを支給する実験が行われました。その結果、「ベーシックインカム受給者の幸福度や健康状態が改善した」というデータが出ています。また、就労意欲への影響は限定的であり、「働かなくなる」という懸念は払拭されつつあります。

さらに、カナダのオンタリオ州でも、2017年から2019年にかけて、低所得者層約4,000人を対象にベーシックインカムの実証実験を実施。こちらでも、ベーシックインカム受給によって人々の精神的なストレスが軽減され、健康状態が改善されたという結果が出ています。また、驚くべきことに、就労意欲や就労時間も増加したというデータも。 ベーシックインカムによって、経済的な不安が減り、心身ともに余裕ができたことで、前向きに仕事に取り組めるようになったのかもしれません。

ベーシックインカムで変わるZ世代の未来

ベーシックインカムが実現したら、私たちの働き方やライフスタイルは大きく変わる可能性があります。 とくに、自由を重視するZ世代にとっては、大きなチャンスとなる可能性もあります。

ベーシックインカムがあることで、生活費の心配をせずに自分の好きなことや得意なことを活かした仕事に挑戦したり、起業したり、あるいはNPOやボランティア活動に参加したりすることもできるでしょう。場所や時間に縛られず、自由に旅をしながら働く「ノマドワーカー」という働き方も、より現実的な選択肢となるかもしれません。

もちろん、ベーシックインカムの導入には、財源の確保や労働意欲の低下、インフレの誘発など、クリアすべき課題も山積みです。 しかし、「AI時代にふさわしい新しい社会システム」として、世界中で議論が活発化していることも事実。

ベーシックインカムが実現したら、どんな社会になるのか。私たちはどんな未来を創造したいのか。これらの問いについて、Z世代一人ひとりが真剣に考え、議論を深めていくことが、より良い未来を創造する第一歩となるのではないでしょうか。

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