オフィスに「15分の聖域」を。仮眠が生み出す、未来の働き方

時間に追われ、情報が溢れる現代。気づけば心身ともに疲弊している……そんな感覚を抱える人は、決して少なくないはずだ。

経済協力開発機構(OECD)の2021年の調査によれば、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、加盟33ヵ国中でもっとも短い。この深刻な「睡眠負債」は、個人のパフォーマンス低下に留まらず、日本全体で年間約15兆円もの経済損失を生んでいるとの試算もある。

だが、この状況を打開するカギが、意外な場所にあるのかもしれない。それは、オフィスでの仮眠。単なる気休めではない、生産性と創造性を呼び覚ます「戦略的休息」としての可能性に、今、光が当たり始めている。

なぜ「15分」なのか?
科学が解き明かすオフィス仮眠の威力

2025年5月、「プラス株式会社」が市場に送り出したオフィス向け仮眠サポート製品『Office Nap™(オフィスナップ)』は、まさにこの「戦略的休息」をオフィス空間でスマートに実現するための回答。

NASA(アメリカ航空宇宙局)の研究を引き合いに出し、昼の26分間の仮眠が認知能力を34%、注意力を54%も向上させたと同社は紹介する。厚生労働省も『健康づくりのための睡眠指針2014』の中で、午後の早い時間の30分以内の昼寝が、眠気による作業能率の改善に効果的であると明記。この「15〜20分程度の短時間仮眠」、いわゆるパワーナップの有効性は、多くの研究によって裏付けられている。

実際、プラスが24年3月に発表した調査によると、職場で昼寝をした経験を持つ人の8割以上がその効果を実感。1回あたりの時間は「5~15分程度」が54.4%と過半数を占め、「15~30分程度」(33.3%)と合わせると、実に87.7%が30分以内の仮眠を実践しているそうだ。

『Office Nap™』シリーズのハイバックタイプのチェアは、快適な座り心地はもとより、身体を預けた際に約110度に自然と後傾する設計など、短時間で質の高い休息を得られる工夫が凝らされているという。これは、科学的根拠に裏打ちされた「15分の魔法」を、オフィスで誰もが享受できるようにするための、具体的な一手といえるだろう。

©プラス株式会社

「社員の活力=企業の成長力」
睡眠投資が導くウェルビーイング経営の新潮流

『Office Nap™』の登場が示唆するのは、単なる新しいオフィス家具の流行ではない。それは、企業が従業員の心身の健康と幸福、すなわち「ウェルビーイング」にどう向き合い、それをいかにして経営戦略に結びつけていくかという、現代企業にとって避けては通れないテーマへの具体的なアプローチではないだろうか。

「KPMG」ジャパンが24年9月に発表した『Future of HR 2024-25』の中でも触れられているように、人的資本経営が重視される現代において、従業員のウェルビーイング向上は、企業価値創造に不可欠な要素として認識されつつある。

特に「睡眠」の質は、メンタルヘルスや日々のパフォーマンスに直接的な影響を与えるため、企業が主体的に良質な仮眠環境を提供することは、先進的なウェルビーイング経営の実践例として、今後ますます注目を集めるに違いない。

働き方改革関連法が2019年4月から順次施行され、企業には長時間労働の是正や有給休暇取得義務化などが課せら、多様で柔軟な働き方への対応が求められている。このような大きな流れのなか、オフィス内に快適な仮眠スペースを設けるという選択は、もはや単なる福利厚生の充実という次元を超え、従業員の生産性と満足度を高め、ひいては企業の持続的な成長を後押しする「戦略的投資」としての意味合いを強く帯びてくることが予想される。

オフィス仮眠が創り出す
創造性とエンゲージメント

かつて、オフィスでの居眠りは「怠慢」の証と見なされる風潮も確かにあった。けれど、科学的知見の集積と社会全体の価値観の変化は、その古い認識を塗り替えようとしている。

『Office Nap™』のような製品は、オフィス空間に質の高い仮眠という新たな選択肢を提示することで、従来の休憩スペースの概念をアップデートし、より生産的で健康的なワークスタイルを後押しする可能性を秘めている。

イトーキの公式サイト記事「働き方改革とは?取組み具体例と企業が抱える課題・解決策をわかりやすく解説」でも、働き方改革の具体的な取組み例として、オフィス環境の整備が挙げられている。

固定席を廃したABW(Activity Based Working)の導入や、コミュニケーションを活性化させるリフレッシュ空間の創出など、そのアプローチはさまざまだが、根底に流れるのは、従業員一人ひとりが心身ともに健やかで、持てる能力を最大限に発揮できる環境を提供するという思想に他ならない。

『Office Nap™』は、その思想を「仮眠」という具体的なアクションでサポートする。たとえば、周囲の視線を気にせず集中できるパネルデザインや、限られたスペースにも設置しやすいコンパクト設計は、多様なオフィスレイアウトへの柔軟な対応を可能にする。それは、「仮眠」を一部の特別な行為ではなく、誰もが自然に選択できる日常のワンシーンとして、オフィス文化の中に溶け込ませる触媒となるのかもしれない。

日本人が抱える根深い睡眠課題。そして、企業が向き合う生産性向上や人材確保といった喫緊の経営テーマ。これらの複雑に絡み合う課題を解きほぐす糸口として、「オフィスでの質の高い短時間仮眠」という選択肢が、これからのワークプレイスの新たな常識となっていく。

そんな未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。それは、個人の潜在能力を解き放ち、組織全体のバイタリティを高め、そして社会全体のウェルビーイングを底上げする、確かな一歩となるはずだ。

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