TikTokで大流行する『かわいい冬用ブーツ』に隠された衝撃の意味:検閲を回避しながら“トランプへの反抗”を示す暗号
近年、SNS上で「アルゴスピーク(algospeak)」という新たな言語現象が拡大している。
アルゴスピークとは、ソーシャルメディアのアルゴリズムによる検閲やコンテンツ抑制を回避するために、ユーザーが意図的に作り出す隠語や表現のことである。
例えば、TikTokでは「死(dead)」を「unalive」、「ポルノ(porn)」を「corn」と言い換えることで、投稿が削除されるリスクを減らしている。同様の手法はYouTubeやInstagramでも見られ、アルゴリズムの規制が厳しい政治的な議論や社会問題に関する投稿では、特に多用される。
このアルゴスピークの最新例が、「かわいい冬用ブーツ(cute winter boots)」というフレーズである。
『かわいい冬用ブーツ』に隠された意味とは
2025年1月以降、TikTokで「かわいい冬用ブーツ」というフレーズを含む投稿が急増した。しかし、その多くはファッションとは無関係な内容であった。実際、このフレーズは以下のような政治的メッセージを暗に示すコードワードとして使用されている。
- 「かわいい冬用ブーツ」=抗議活動
- 「boots(ブーツ)」は、抗議活動やデモを指すスラングとして使われている。
- 「ICE(氷)から身を守る」=移民・関税執行局(ICE)による取り締まりへの警戒
- 米国の移民政策に批判的なユーザーが、ICEの取り締まりについて議論する際に「氷(ice)」と比喩的に表現。
これは、トランプ政権の移民政策に反対する動きの一環として発生したものであり、#cutewinterboots のハッシュタグを通じて、多くのユーザーが抗議活動や移民問題に関する情報を拡散している。
なぜアルゴスピークが広がるのか?
ソーシャルメディアプラットフォームのアルゴリズムは、政治的な話題や過激な議論を検出し、シャドウバン(shadowban)と呼ばれる検索結果の表示制限やリーチの制限をかけることがある。これにより、意図せずしてコンテンツの可視性が低下し、投稿がほとんどのユーザーに届かなくなる。
TikTokは、米国内での規制強化が進む中、政治的な投稿のアルゴリズム上の扱いを変更した可能性がある。そのため、ユーザーは従来のキーワードを回避し、新たな表現を模索する必要に迫られた。
アルゴリズム vs. ユーザー:終わりなき攻防
アルゴスピークの誕生と拡大は、SNSプラットフォームとユーザーの間で続く「言葉の攻防」の一環である。
ハーバード大学のメディア研究者、ダニエル・カプラン氏は次のように指摘している。
「アルゴリズムは検閲のためだけに存在するのではなく、特定のコンテンツを強調し、ユーザーの行動を誘導する。これに適応するために、ユーザーは自然と新しい表現を生み出してきた。」
例えば、過去には「LGBTQ+」関連の投稿がアルゴリズムにより抑制されていると指摘され、ユーザーは「🌈(虹の絵文字)」を多用して投稿内容を暗示する方法を取った。このような回避策は、「かわいい冬用ブーツ」のようなコードワードの使用にも通じる。
現時点では、TikTokが「かわいい冬用ブーツ」のフレーズに対して特定の制限を設けるかどうかは不明である。しかし、こうしたコードワードは時間とともに解読され、新たな表現が生まれることが予想される。
また、SNSプラットフォームの規制が厳しくなるにつれ、アルゴスピークはより洗練され、他のプラットフォームへも波及する可能性がある。
ユーザーが自由に意見を表明できる場を維持するための手段として、今後も進化を続けるだろう。