まず泊まり、体験してから面談を行う「体験一体型採用」とは。Nazunaのホテル業界における採用革命
ホテル業界が長年抱える高い離職率という根深い課題に、京都の町屋旅館を手がける株式会社Nazunaがユニークな一石を投じた。
求職者がまず無料で宿泊し、その施設の魅力を肌で感じてから面談に臨むという新しい採用モデル。これは、業界の常識を変える一手となるのだろうか。
仕事を知る前に“感じる”。
ミスマッチを防ぐ「体験一体型採用」
Nazunaがホテル業界特化の求人サービス「in the HOTEL」と連携して開始したのは、「体験一体型採用モデル」。
これは、求職者がNazunaの運営する旅館に無料で宿泊し、そのサービスや雰囲気をゲストとして体感した上で、現場スタッフとの面談に進むという画期的な採用フロー。
背景には、26.6%(令和5年)にも上る「宿泊業、飲食サービス業」の深刻な離職率があるという。入社前に抱く華やかなイメージと、入社後の厳しい現実とのギャップが、早期離職の大きな一因とされている。
この取り組みは、採用理論の一つである「RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)」に基づくものだそう。
仕事のリアルな姿を事前に深く理解してもらうことで、入社後のミスマッチを最小限に抑え、人材の定着率向上を目指す、論理的かつ人間的なアプローチだ。
数々のアワードが証明する「働きがい改革」への本気度
このユニークな採用モデルが話題作りではないことは、Nazunaがこれまで築き上げてきた実績からうかがえる。
同社は「2026年に宿泊業界の革命児となる」というビジョンを掲げ、従業員の「働きがい改革」を最優先課題として取り組んできた。
その結果、多様なキャリアパスの導入や評価制度の透明化といった取り組みが評価され、「第11回 GOOD ACTION AWARD」で優秀賞を、「ベストモチベーションカンパニーアワード2025」では中小企業部門で第6位を受賞。
従業員のエンゲージメントを第一に考える企業文化があるからこそ、採用段階から候補者と真摯に向き合う、このようなモデルが生まれたのかもしれない。
採用の常識を変え、業界の未来を拓く一歩に
この採用モデルは、求職者にとっては、納得感を持ってキャリアを選択できるという大きなメリットがある。
一方で企業側にとっても、自社の文化に本当に共感してくれる、モチベーションの高い人材と出会う絶好の機会となるだろう。
代表取締役の渡邊 龍一氏は、この取り組みを通じて、自社のサービス精神である「おせっかい」を候補者に実体験してもらい、お客様の立場から働くイメージを掴んでほしいと語る。
そして、この試みが自社だけでなく、業界全体の入職率向上に繋がることへの期待もにじませた。一企業の採用活動という枠を超え、宿泊業界の未来を明るく照らす、重要な一歩となりそうだ。