観光をやめた街、富士吉田。布が教えてくれた「関わる旅」のかたち
旅とは、景色を集める行為ではない。富士山の麓・富士吉田で開催された『FUJI TEXTILE WEEK 2025』は、その事実を体で理解させる場だった(2025年12月14日にて閉幕)。
布に触れ、場に立ち、関係に巻き込まれる。ここで提示されたのは、アートではなく「移動の価値観」そのものだ。
なぜ、いま「布」が旅の中心に据えられるのか



布は、見るだけでは完結しない。富士吉田で行われた国内唯一のテキスタイル芸術祭には、世界9地域から32組のアーティストが参加し、延べ5万5,000人が訪れた。
重要なのは数ではない。展示された布は、装飾や商品ではなく、生活や産業の時間を折り畳んだメディアとして存在していた。無料で鑑賞できるエリアが多く、外国人旅行者が立ち止まり、触れ、考える。理解より先に感覚が動く設計こそ、この芸術祭の核心だ。
工場跡に入った瞬間、旅は「消費」をやめる


会場は、かつて織物産業を支えた工場跡や空き店舗。整えられた観光施設ではない。未編集の空間に身を置くことで、鑑賞者は観光客という立場を失い、この街の一時的な関係者になる。
写真を撮って去るのではなく、音や匂い、温度を引き受ける。ここでの体験は、名所巡りではなく学習に近い。街そのものが、価値観を更新する装置として機能している。
この芸術祭は、すでに日常へ移行している


2025年は、作家・織物業者・企業の協働を可視化する「FUJIMICHI ARTS」が本格化した。展示はゴールではなく、関係性を実装するための通過点だ。
その象徴が、鈴木マサル《Everyday Patterns, Festive Colors》。銀行の外観を覆うこの作品は、2026年5月29日まで展示が続く。
営業時間に関係なく、街を歩けば目に入る。行けば、もう始まっている物語に参加できる。次の旅で問うべきは、どこへ行くかではない。何に関わり、何を持ち帰るかだ。
『FUJI TEXTILE WEEK 2025』
【展示期間】2026年5月29日)(金)まで
【会場】山梨中央銀行 吉田支店
【住所】富士吉田市下吉田2丁目6-9
※営業時間に関わらず、外観からご覧いただけます。鑑賞の際は一般のお客様のご迷惑にならないようにご注意ください。






