無一文の旅が、私に教えてくれたこと【ヒッチハイク編】

バックパックひとつの貧乏旅行が教えてくれるものは大きい。移動も寝食も楽ではない。けれど、だからこその気づきや学び、そして出会いがあるわけだ。

ここに紹介する旅人の型破りなスタイルや、心に素直な生き方を見ていると、同じ経験をしていない自分でさえも「もっとできることがある!」と、ついその気にさせられる。

3人の旅人のストーリーをめぐる『無一文の旅が、私に教えてくれたこと』、まずは【ヒッチハイク編】からどうぞ。

仕事でお金を手にするほど、
心は虚しくなっていった。
Rhinal Patel(映像ディレクター)

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Photo by Paco Rocha

イギリス人女性のRhinal Patelさんはロンドン在住、映画制作ディレクターとしてのキャリアを築いていた。アンジェリーナ・ジョリーをはじめ、ハリウッド女優らと仕事をするうちに、生活には困らないだけの十分な収入を得るようになっていた。

ところが仕事が忙しくなるにつれて、人生に違和感を抱くようになったという。自分も、周りの人たちも、「人生をお金で考えるようになってしまった」と。そのことが彼女の心に窮屈さと虚しさをもたらしていった。

このままではいけない…彼女は、自分の人生を取り戻すための旅に出ることを決意した。

Rhinalのギモン:
お金に囚われない人生とは、
どういうものか?

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Photo by Paco Rocha

ひとり旅を通じて、それを自分の目で確かめてみたかった。

Rhinalの計画はこうだ。ロンドンの自宅から目指すのは香港。そこからヒッチハイクでまたロンドンまで戻ってくる。ところが、訪れる先々で目にしたのは、想像していた以上の貧困、社会格差、そして差別だったそうだ。

計画していた道程の折り返し地点に差し掛かったとき、彼女は「お金に束縛されない人生」について、改めて見つめ直そうとしたのかもしれない。香港に到着後、Rhinalは、インドの子供達を支援する慈善団体「Goa Outreach」に、所持金を含む預金のすべてを寄付してしまう。文字通りの無一文がここから始まった。

全額寄付で無一文に。でも、
人とのつながりを感じることができた。

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Photo by Paco Rocha

ホテル生活から一転、寝床はハイウェイのサービスステーションやテントに。食料を手に入れるため、レストランを訪ねて廃棄される食材を手に入れることもあった。環境も境遇も往路とはまったく別物の復路。

だが、彼女は言う。無一文になったとたん、気づくことがとても増えたと。

「金銭のやりとりなんてなくても、人と人はつながっていくんです。私の周りには、大切な人であふれるようになっていったの。深く信頼のおける友だちばかりがね」。

過去を振り返ったり、この先の人生を憂うよりも、いま生きているこの瞬間を何よりも大切にできたとき、今まで感じたことのない幸福感がRhinalの心を満たしていた。

貧困や差別に直面するたび、
芽生えていく「分かち合う」ことの大切さ

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Photo by Paco Rocha

のちにこの旅を振り返ったRhinalが、「いちばんショッキングだった」と振り返った出来事がある。

北欧の街を旅していたときのこと。ひどい差別を受け、食べるものに困っていた難民たちが、一斉にハンバーガーチェーン店へと押しかけ、「食べ物を分け与えてくれ!」と懇願していたそうだ。Rhinalもまたインドをバックグラウンドにもつイギリス人。肌の色で区別されたのか、道を聞こうと声をかけただけで嫌な顔をされた経験も、一度や二度ではなかったという。

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Photo by Paco Rocha
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Photo by Paco Rocha

インドのスラムで暮らしている子どもたち、差別を受ける女性や難民、社会的マイノリティとされる人々の生活の場に、彼女自身も身を置くように旅を続けた。彼らと出会い、話を聞くたびに、旅を続ける彼女を支えてくれた親切な人たちに対して「なにか自分にもできることがある」というRhinalの情熱は、帰国の途についた後も、冷めることはなかったのである。

「旅を通して経験した、『分かち合う』という素晴らしいバトンを、今度は自分が人から人へと繋ぎたい」。

せまい場所で、ビジョンや言葉にしばられる人生をやめた瞬間、今まで思いもしなかった感動やすばらしい発見と出会った。改めて世界の広さを思い出したRhinalは現在、クラウドファンディングのシステム『TOTAL GIVING』に彼女のページを開設し、支援活動に励んでいる。彼女の活動をサポートしたい人はこちらへ。

最近では、国際人権NGO(アムネスティ・インターナショナル)で登壇し、自身の旅について語っている。

不安や恐怖を乗り越えたのは
人々の「優しさ」と「愛情」

女性ひとりのヒッチハイクは当然リスクをともなう。実際、Rhinalも道中3度、暴漢に襲われている。肉体的には生き抜いたかもしれない、でも精神はそうじゃなかった。心が壊れ、自身を失い、大きな恐怖を植え付けられた気持ちだったと振り返る。

「でもね、そんな自分を救ってくれたのは、やっぱり出会った人たちの『優しさ』と『愛』かな」。

傷つきやすく弱いと思われる女性を、大胆で自信のある強い女性に変えてくれるのは、いつだって『優しさ』と『愛情』だと彼女は強調する。人を信じることは、自分を守ることなのだと。

Licensed material used with permission by Rhinal Patel
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