空気と湿度まで管理する賢さ。家事から解放してくれるロボット掃除機

Z世代にとって、住まいの快適さは単なる清潔さ以上の意味を持つ。心地よい空間の雰囲気、心身の健康まで含めたトータルなウェルビーイングが重視される時代。

そんな新しい価値観に応えるように、家事、とりわけ「清掃」の概念を根底から塗り替えるかもしれないシステムが登場した。

空間全体をケアする清掃システム『SCOP』

Yanko Designで紹介された『SCOP』は、Z世代のライフスタイルに合わせて設計された、インテリジェントでモジュール式の清掃システムだ。

その中核は、ロボット掃除機の役割を担う「SCOP-Hub」。しかし、その機能は床をきれいにするだけにとどまらない。

このシステムがユニークなのは、空間の「見えない家事」にまで踏み込む点。SCOP-Hubは、家の中を動き回りながら床を掃除するだけでなく、湿度や空気の状態といった環境データを収集する司令塔として機能する。

そして、湿気がこもりやすい場所にはシリカゲルを用いた除湿モジュール「Humi」を、不快な臭いが気になる場所にはプラズマイオンで臭いを分子レベルで分解する脱臭モジュール「Odor」の配置を推奨。

ユーザーは、アプリの指示に従って各モジュールを置くだけで、カビや悪臭といった潜在的な問題に先手を打てる。

生活を学習し、問題を予測する知性

SCOPの真骨頂は、ユーザーの生活パターンを学習し、次に起こることを予測する知性。日々の清掃活動や環境データの変化は「SCOP Log」として記録され、システムが「この家で起こりうること」を学習していく。

例えば、雨の日にユーザーが濡れた洗濯物を室内に干したまま外出したとする。SCOPは、過去のデータから室内の湿度上昇を予測し、カビが発生する前にHumiモジュールの使用を促す。

ペットがいる家庭なら、定期的にOdorモジュールを稼働させて臭いを抑制するかもしれない。これは、問題が発生してから対処する「事後対応」ではなく、問題の発生そのものを未然に防ぐ「予測的タスク管理」だ。

ユーザーが複雑な設定に頭を悩ませる必要はなく、システムが自律的に最適なアクションを提案してくれる。

「アンビエント・コンピューティング」で家事から解放

SCOPの思想は、テクノロジーの大きな潮流である「アンビエント・コンピューティング」と深く共鳴するものだ。これは、テクノロジーが生活空間に溶け込み、ユーザーがその存在を意識することなく、自然に恩恵を受けられる状態を指す。

SCOPは、まさにこの概念を「清掃」という領域で具現化したものといえるだろう。

近年、LGが発表したテーブル一体型の空気清浄機「PuriCare AeroFurniture」のように、家電がインテリアに溶け込み、生活の質を静かに向上させる製品が増えている。

SCOPもまた、ミニマルで洗練されたデザインによって、無骨な掃除用具ではなく、一つのインテリアとして空間に調和する。

このようなアプローチは、手間をかけずに最大限の効果を得たい「タイムパフォーマンス」や、空間の「Vibe(雰囲気)」を重視するZ世代の価値観と、極めて親和性が高い。

テクノロジーが変える「住まい」との関係性

SCOPが提案するのは、掃除の手間を省く利便性だけではない。

「人が家事をこなす」という従来の考え方から、「住まいそのものが自律的にコンディションを整えてくれる」という、人と空間との新しい関係性へのシフト。テクノロジーが目に見えない負担を引き受けてくれることで、人はより創造的で、本質的な活動に時間と意識を集中できるようになるかもしれない。

このコンセプトは、未来の暮らしがどうあるべきか、その一つの可能性を示している。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。