「読書が目的」の旅がトレンドに。海外高級ホテルで広がる文学体験
近年、海外の高級ホテルを中心に、読書をテーマにした宿泊体験、いわゆる「読書リトリート」を提供する動きが活発化している。
単に静かな環境で本を読むだけでなく、著者や他の参加者との交流を通じて、新たなコミュニティや文化的な体験を生み出す試みとして注目されているようだ。
具体的なプログラムの多様な展開
フォルメンテーラ島のリゾートホテルTerankaは、夏期に『Conversations From the Sea Library』と題した文学サロンを主催。
このイベントでは、詩人のDavid Whyte氏のような作家や読書家が集い、議論を交わす場が提供されるとのこと。ホテルのインテリアデザイナーであるKatrina Phillips氏は、『Elle』の取材に対し、図書館を会話とコミュニティを促すための空間と位置づけていると説明している。
ニューヨークでは、『Page Break』という団体が週末を利用した読書リトリートを複数のホテルで開催。特徴的なのは、参加者全員が同じ本を一冊選び、週末を通して交代で音読しながら読破する点だ。創設者のMikey Friedman氏は、共に読書をすることで得られる精神的な効果に着目したという。このプログラムは、デビュー直後の作家など多様な書き手を支援する側面も持ち合わせる。
また、キャッツキル山地にあるScribner's Lodgeは、昨年12月に2泊3日の文学リトリート『Booked In』を実施した。作家や書評家を招いたこのイベントは好評だったらしく、本年11月の再開催も決まっている。
書店やブッククラブとの連携事例
ホテル単独の取り組みに留まらず、外部の組織との連携も進んでいる。
キャッツキル山地のブティックホテルHotel Lilienは、ブルックリンの独立系書店「Books Are Magic」と提携し、館内の蔵書を充実させた。サンタモニカのThe Sandbourne Santa Monica hotelも、ロサンゼルスの書店「Zibby’s Bookshop」との協力でプールサイドにライブラリーを新設したという。
オンラインのブッククラブが、リアルな交流の場としてホテルを活用するケースもある。女優リース・ウィザースプーンが運営する「Reese's Book Club」は、ホテルグループのWorld of Hyattなどと提携し、著者と過ごすグランピングでのリトリートを発表した。
専門家が分析するトレンドの背景
なぜホテルは読書体験の提供に力を入れるのか。The Book Clubの創設者であるKriticos Mwansa氏は、ホテルが芸術や文学に関心を持つ新たな顧客層にアプローチし、自らを文化的な空間としてブランディングする狙いがあると分析する。
また、観光の閑散期において、地元住民を惹きつけるための有効な施策という側面も。宿泊客に楽しみを提供しつつ、地域との関係を深めることは、ホテルにとって合理的なビジネス戦略といえるだろう。






