欧州クラウドに新勢力「DataCrunch」が“脱GAFA”の旗手に
AIの進化とともに加速するコンピューティング需要。その裏で深刻化しているのが電力消費と外資依存の構造だ。フィンランド発のスタートアップ「DataCrunch」は、欧州初の“ローカル&グリーン”なAIクラウド・ハイパースケーラーを目指し、約64億円の資金調達に成功。再生可能エネルギーで駆動する次世代AIインフラの可能性とは?
再生可能エネルギーで動く「AIクラウド」
DataCrunchは、AIの開発・トレーニング・推論に必要なコンピューティング環境を提供するインフラ企業。フィンランドとアイスランドにデータセンターを構え、すでに100%再生可能エネルギーで稼働中だ。
今回調達した約64億円の資金で、同社は**フィンランドに新たな施設(約10ヘクタール)を建設予定。さらに、ラトビアではAIモデル訓練専用の「AIギガファクトリー」**構想も進めている。
自然エネルギーを活用するだけでなく、最新のNVIDIAチップ(HGX B200/B300/GB300)やクラスタリング技術により、電力効率とパフォーマンスの両立も追求している。
「データ主権」が問われる時代に
欧州のAI市場は急成長を続け、2033年には1.4兆ドル規模に達すると予測されている。その中で課題となっているのが、米国クラウドの寡占だ。現在、AIワークロードの約70%がAmazon、Google、Microsoftといった外資に依存しているという。
DataCrunchが訴えるのは、「データ主権(data sovereignty)」の必要性。地域の法制度・価値観に準拠したローカルインフラを構築し、企業が自国のデータを自国で管理できる体制を作ること。それが、セキュリティや規制対応の観点からも不可欠になりつつある。
グリーン×高性能=新しい競争力
高性能なAIインフラと環境配慮の両立は、これまで難題とされてきた。だが、DataCrunchはカーボンニュートラルかつハイパフォーマンスなシステムを構築しようとしている。
今後リリースされる予定の機能には、マネージドKubernetesによるクラスター管理や地理的に分散されたストレージなどがあり、さらなるスケーラビリティと柔軟性も見込まれている。
エネルギー大量消費型のAIが抱える環境課題に対し、「持続可能なAIインフラ」という選択肢を提示している点で、同社は他のプレイヤーと明確に一線を画す。
これからのAIは
「どこで、どう動かすか」がカギ
AI開発が民主化しつつある今、重要なのは“どのモデルを使うか”だけでなく、“どこで、どのような仕組みで運用するか”というインフラ選択の視点だ。
外資依存か、ローカル回帰か。化石燃料か、再エネか。DataCrunchの挑戦は、そうした構造的な問いに対する一つの回答となるかもしれない。
同社の動向は、欧州だけでなく、グローバルに展開されるAI基盤の設計思想にも影響を与える可能性を秘めている。






