Amazonの牙城を崩すかー。「TikTok Shop」ついに欧州上陸
私たちにとって非常に身近な存在になった「TikTok」が、EC事業に本格参入。
今月10日、同社はECプラットフォーム「TikTok Shop」をスペインで開始した。これは、エンタメ業界の雄がEC業界の巨人「Amazon」の牙城を崩す序章となるのだろうか……。
TikTok Shop、欧州上陸
その戦略の先に描く未来
「TechCrunch」によると、「TikTok Shop」は2021年にイギリスで誕生し、ユーザーがTikTokのアプリ内で商品を購入できるサービスだ。東南アジアやアメリカなど、世界各国で展開を進めてきた同サービスだが、今回満を持してヨーロッパに進出。まずはスペイン市場での足場固めを狙う。
当初、同社は2024年中にスペインを含むヨーロッパ5ヵ国でのサービス開始を予定していた。しかし計画は一転し、アメリカ市場の開拓を優先させていた。
それも当然、「TikTok Shop U.S」が爆発的な成長を遂げていたから。
彼らは今年のブラックフライデーにおいて、驚異的な売上を記録。1日の売上高はなんと1億ドルを超え、前年比の3倍に到達した。さらに、ブラックフライデーとサイバーマンデーを含む週末にかけては、買い物客が前年比で165%も増加したというデータもある。
「動画×EC」の破壊力
消費体験はどう変わる?
なぜTikTok Shopは、これほどまでに世界各国で急成長を遂げているのだろうか。
その要因のひとつとして、従来のECサイトにはない、新しい購買体験を提供している点が挙げられる。
従来のECサイトでは、商品情報は静止画とテキストが中心だった。しかし、TikTok Shopではインフルエンサーが商品を魅力的に紹介する動画を通じて、ユーザーは視覚的に商品の魅力を理解できる。さらに、コメント欄を通じて他のユーザーと商品の感想を共有したり、質問したりすることも可能だ。
つまり、TikTok Shopは「商品を見る」段階から「購買意欲を高める」段階までをシームレスに繋げているのだ。これは従来のECサイトでは実現が難しかった、消費体験の革新と言えるだろう。
立ちはだかる高い壁
TikTokは乗り越えられるか?
「TikTok Shop」のヨーロッパ進出は、EC業界の勢力図を塗り替える可能性を秘めているが、その分課題も山積みだ。
そのうちのひとつが、データセキュリティやプライバシーに関する懸念。現に同コンテンツは欧米諸国において、規制強化の波に直面している。実際にアメリカでは政府機関によってTikTokの使用が禁止されており、事業売却も要求されていた。
彼らはこれらの課題を克服し、巨大市場であるヨーロッパでの成功を掴み取れるのだろうか。どちらにせよ、今回のヨーロッパ進出は、EC業界の未来を占う試金石となるに違いない。