感覚過負荷をAIが予測。ニューロダイバージェント(神経多様性を持つ人々)のためのアプリが開発中
感覚過負荷による「メルトダウン」を未然に防ぐことを目指す、AI搭載のアプリが開発されている。
ソフトウェア開発者であり、ニューロダイバーシティの擁護者でもあるJennifer Opal氏が手がける『ssensimm』は、ニューロダイバージェント(神経多様性を持つ人々)が個別の感覚サポートを得られるように設計された、無料の健康技術アプリだという。
これは米国のテクノロジーメディア『Cnet』が報じたもの。
空港での苦い経験が開発のきっかけに
Opal氏がこのアプリの開発に着手したきっかけは、空港でのある経験だった。
目に見えない障害があることを示すバッジを首から下げていたにもかかわらず、状況に圧倒され「自閉症メルトダウン」に陥った際、周囲のスタッフは誰も助け方がわからなかったという。
このフラストレーションをバネに、Opal氏は同様の経験を持つ人々が必要とするものを自ら作ることを決意した。
『ssensimm』は当初、Opal氏個人の機械学習プロジェクトだったが、プロトタイプをLinkedInで共有したところ、5万回以上閲覧され、3週間で約5,000人がアプリの待機リストに登録。
自身の経験が、想像以上に多くの人々に共通するものであると気づいたという。
ウェアラブルデバイスとAIで危機を予測
『ssensimm』は、Apple WatchやOura Ringなどのウェアラブルデバイスからリアルタイムの感覚入力を収集。
騒音レベルや場所といった環境要因と、疲労度などの個人データを組み合わせ、AIが感覚的な困難を予測する。そして、危機が発生する前に、パーソナライズされた対処法を提案することで介入する仕組みだ。
Opal氏によると、ストレスを感じている時に静かなカフェを提案したり、混雑の少ない帰り道をリマインドしたり、さらには月経周期が感覚に与える影響も考慮するという。
また、ユーザーが困難な状況にある場合、信頼できる人にメッセージを送信する機能も備わっているとのこと。
データはプライバシー保護のため、すべてユーザーのデバイス上にローカルで保存される。
診断を待つ人々にもサポートを
このアプリは、まだ診断を受けていない、あるいは診断を受けることが困難な人々にもサポートを届けることを目指している。
ADHDと自閉症の併発に関する研究はまだ途上であり、特性の現れ方も人それぞれ。
そうしたケアのギャップを埋めることも、『ssensimm』が担う重要な役割の一つと言えるかもしれない。
アプリの正式なローンチは2025年末に予定されており、現在は公式サイトで早期アクセスへの登録を受け付けている。






