MZ世代と考えた“自分らしい飲み方”。イベント『My Design Drinking』レポート
健康志向の高まりやコロナ禍を経て、この10年でお酒との付き合い方は大きく変わりました。お酒は人との距離を縮める一方、飲み過ぎはハラスメントや健康リスクにもつながるため、今あらためて“自分にとっての適度”を考える必要があります。
そこで、自分にとっての適正飲酒を知る機会として、去る11月16日、20代の学生・社会人を対象に“自分らしいお酒との向き合い方”を考えるイベント「My Design Drinking」が開催されました。飲む/飲まないの二択ではなく、体質や気分、状況に合わせて量やペースをデザインしていくという考え方を共有するものです。
そんな問いかけのもと、「自分らしいノミカタ」を探る1日がスタートしました。
学びからはじまる
自分の“ノミカタ”デザイン

まず自分らしいノミカタをデザインするにあたって、そもそも「お酒の価値」とは一体なんなのかを知る必要があるはず。その価値とは何かを知るためにお招きしたのが、感性設計学の提唱者で東京大学教授の柳澤秀吉さんです。

感性設計学とは、人間の情緒的な感情や感覚を脳の原理から数理的にモデル化し、ものづくりやサービスのデザインに活かす新しい学問のこと。
柳澤さん自身は学会の懇親会などでお酒を嗜む機会がありますが、今回の「My Design Drinking」に登壇するにあたって1ヵ月半のソバーキュリアス(しらふの好奇心)を試してみつつ、感性設計学の理論に当てはめて飲酒の価値を分析してみたところ、ひとつの結論に達したそうです。
それが「適正飲酒は得である」ということ。
柳澤さんによると、そもそも価値は認識的価値(知的な満足や好奇心、知識欲の充足)と実利的価値(機能的なメリット)に分類されるそうです。「お酒の味わいを五感で楽しむ」「お酒ができるまでのストーリーを知る」「お酒を通じて本音の話が聞け、新たな繋がりができる」といった認識的価値は健在。
しかし、お酒の実利的価値はだんだんと減ってきている一方で、逆にノンアルコール飲料の実利的価値は「相手が気にして飲酒量が減る」「ノンアルコール飲料でも懇親会を楽しめる」など増えているのではないか、とのこと。
つまり、まったく飲まなかったり飲みすぎたりするのではなく、ノンアルコール飲料も組み合わせながら、ほどほどにお酒と付き合うことによってお酒の価値を最大化できる、というわけです。

この柳澤さんのプレゼンテーションで提示された理想的なお酒との付き合い方を実践しているのが、登壇した元日向坂46の潮紗理菜さん。
潮さんは大学に入学した際にアルコール体質試験パッチで赤くなったこともあって自身がお酒に弱いことを自覚し、飲み会の際は最初の1杯に抑えてあとは話を聞く側に回ったりお水を手配したりしつつ過ごすそう。
そのおかげで食事の味や会話もはっきりと覚えていられて、次に会った時にコミュニケーションを取れたりと、自分の体質に合った飲み方のメリットを実感しているそうです。

ちなみにこの日もアルコール体質試験パッチを参加者・登壇者の全員で実施したのですが「飲めるほうだと思ってたけれど赤くなった」や「飲めないと思っていたけれど、飲めるみたい」と、自分が思っていたのと違う結果が出た参加者もたくさんいました。
じつは潮さんもそのひとりで、あらためて試してみると日本人の約1割弱にあたる「お酒をほぼ飲めないタイプ」ではなく、約3割強にあたる「お酒に弱いタイプ」だったそう。

また、もうひとりの登壇者の1tappyさんもあまり強いほうではなく「大学時代に1回しか休めない必修科目の授業を寝過ごしてしまった」というものの、飲まない友人と過ごす時は自身もコーラで過ごし、お酒好きな友人と過ごす際は一緒に飲むなど、場の雰囲気や状況に合わせながら、適切な距離でお酒を嗜んでいるようでした。
懇親会などでお酒を嗜む機会のある柳澤さんに、シチュエーションに合わせて飲むか否かを決める1tappyさん、お酒に弱いことを自覚して飲酒量を控えている潮さんと、お酒との付き合い方も三者三様。それぞれが「どう飲むか」を考えたうえで自分に合ったお酒との付き合い方を実践することで、柳澤さんが提示した認識的価値と実利的価値を最大化しているようでした。
「度数」をデザイン──
FOOD×DRINKで感じる
自分らしい選択

唐揚げとビールのようについつい箸も盃も進む気の置けない組み合わせや、ワインとチーズのように両者のマリアージュを楽しむ関係など、食事とお酒は切っても切れない関係。
次の料理とどんなドリンクを合わせようかと考える瞬間は食事における最も楽しい時間でもありますが、その時に意外と気にしないのがお酒のアルコール度数ではないでしょうか。
生活習慣病のリスクを高める飲酒量は1日あたり男性で40g、女性で20gとされていますが、これは多量飲酒の人が飲酒量を控えるひとつの目安であって、ここまで飲んでもよいという量ではありません。体格や体質によっても異なるものですし、たくさん飲めば楽しいというものでもありません。
テーブルを囲む相手によって飲み方はさまざま、自分の気分や体調によって飲み方を変えたりできれば、飲む人も飲まない人も、もっとお酒と楽しく付き合えるはず。

そこで、参加者の皆さんに「居酒屋」「イタリアン」「中華」の3種をテーマに、アルコール度数の異なる3タイプのドリンク(通常のアルコール飲料、度数3%のローアルコール飲料、ノンアルコール飲料)から選んでもらい、自分らしいノミカタをデザインしてもらいました。
お互いに初対面ながら「飲み会で緊張して飲み過ぎたことがあって……」や「ノンアルが充実しているお店はお洒落なところが多いから、飲み会でそういうお店だと嬉しい」など、休憩中もお酒との付き合い方で盛り上がっていました。


なかでも印象的だったのは、特にお酒を嗜むタイプの人たちの選び方。
「3%のハイボールは味が気になったので試してみた。飲みごたえもあるし、長丁場の飲み会でも飲み過ぎずに良さそう」といった選び方や「今日は初対面の人がたくさん集まるので、飲まずに会話に集中したかった」という理由でローアルコール飲料やノンアルコール飲料を選んでいました。
ほかにも「1杯はアルコール飲料を飲んだから次はノンアルで休憩して、最後にローアルコール」といった具合に、同じ時間を共有しながらもそれぞれが思い思いの選び方でフードとドリンクを組み合わせて、時には「なんでそれを飲んだの?」や「ローアルコールのレモンサワーってどんな味?」など、それぞれのノミカタに興味を持っている様子でした。
「My Drinking Discover Note」
ノミカタのデザインを形に


そして次は普段の飲み方を振り返りながら、いまのお酒との付き合い方の課題や理想的な付き合い方を踏まえて、それを実現するためにデザインしてみようというワークショップ。
「いつ、どこで」「どんなお酒を」「どんな人たちと」「どんな料理と」「何杯ぐらい、どんな順番で」嗜めばいいかをカードに記して、具体的に自分の理想のノミカタを設計し、他の人たちと共有することでディスカッションしてみよう、という試みです。

飲める人もそうでない人も実際にこれまでの自分の飲み方を思い浮かべながらデザインしてみると「友人と一緒にお店で飲む」という人や「落ち着ける自宅でひとりゆっくり飲むのがいい」というシチュエーションから、会話や食事、リラックスが目的など、人によってお酒との付き合い方も様々であることが浮かび上がります。
さらに自分がデザインしたノミカタを他の人と共有してみると「自分は疲れた時に飲みたいけれど、心が穏やかな時に飲みたいという人もいるんだ」や「意外とお酒好きな人も飲み過ぎ対策をしているんだ」「お酒は酔うためではなく、仲良くなるためのもの。会話を楽しむことを重視したくなった」など、新たな気づきもあったようです。
自分らしい“ちょうどよさ”を
デザインする時代へ

それをあえてやってみることで、今まで飲み会ではお酒を飲むのが当たり前だと思っていたけれど、どう飲むかを考えるともっと自分らしくお酒と付き合っていけるはず。
新しい時代の“ノミカタ”を実践することは自分らしさの表現であり、他の人のノミカタも尊重することで多様なお酒や人との付き合い方が花開くのではないでしょうか。
デートプランは綿密に練ったり他人に相談したりするけれど、お酒の飲み方を前もって考えたり誰かの意見を聞いたりすることはなかなか無かったはず。
お酒を好きな人もそうでない人も、お酒との関係を少しだけ考えてみることで、もっとライフスタイルが楽しくなるはず。あなたも新しいノミカタをデザインしてみませんか?







