「正解」を書き換える。国立公園で出会う「6つのアナザー富士」

日本の美の象徴である富士山は、その完璧なシルエットゆえに古来より憧れとされ、時に「正しさ」や「完成形」の象徴でもあります。

けれど、全国の国立公園に点在する「〇〇富士」と呼ばれる山々に目を向ければ、そこにはもう一つの真実があることに気づきます。ある山は荒々しい岩肌を晒し、ある山は海に浮かび、またある山は見る角度によって全く異なる顔を見せる……。

それらは決して富士山の“コピー”ではありません。本家という正解の枠組みを借りながらも、土地の風土に合わせて独自の進化を遂げた「アナザー・サイド(別の正解)」と呼ぶべき存在。

「正解は、一つじゃない」。 そう教えてくれる各地の名峰巡りは、きっと凝り固まった固定観念を崩し、多面的な自分を受け入れるための、心の余白を取り戻す旅となるはずです。

“孤高”という強さを知る
「利尻富士」
(利尻礼文サロベツ国立公園)

©環境省国立公園魅力発信Lab PR事務局

最北の海に浮かぶ利尻山。厳しい自然の中にポツンと立つその姿は、周囲に流されない「個」の強さを教えてくれます。夏は登山、冬はパウダースノー。見る場所や季節で表情を劇的に変えるこの山は、一つの役割に縛られない自由な生き方を肯定してくれるようです。

Access:稚内または利尻島からフェリー。ハイキングなら桃岩展望台コース(全長約6.4km)がおすすめ。

暮らしと溶け合うグラデーション
「蝦夷富士」
(支笏洞爺国立公園)

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富士山と見紛う美しい稜線の羊蹄山。山頂の高山植物から、裾野に広がる田園風景まで、標高ごとに変化する植生の垂直分布が特徴です。変化を受け入れながら、人々の営みと美しく調和して生きるしなやかさを、その雄大な景色から学んでみては?

Access:札幌や新千歳空港からJRで洞爺駅へ。登山口(倶知安コース)へは各駅からバスも運行。

表と裏、二面性を愛せる自分へ
「南部富士」(十和田八幡平国立公園)

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優美で穏やかな裾野が広がる東側に対し、西側は険しく荒々しい稜線を覗かせる。見る角度で劇的に表情を変えるこの山は、まさに多面性の象徴です。漆黒の岩が連なる「焼走り溶岩流」という荒々しい過去を抱えながら、なお美しくそびえるその姿。自分の中にある「光と影」のどちらも否定しなくていいのだと、静かに勇気づけてくれます。

Access:写真は焼走り溶岩流から。盛岡駅からJRで大更駅まで行き約40分)、大更駅からタクシーで約15分。
※2026年1月現在、岩手山は噴火警戒レベル2のため、全登山道で入山規制(登山不可)となっています。

“神の山”が魅せる変幻自在の美しさ
「伯耆富士」
(大山隠岐国立公園)

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「東の富士山、西の大山」と称されるこの山もまた、ある時はたおやかな富士の如く、またある時は険しい絶壁の如く姿を変えます。古くから信仰を集めてきた「神の山」が見せる多面的な美しさは、訪れるたびに新しい気づきを与えてくれるはず。一つのイメージに縛られる必要はない――その変幻自在な佇まいは、新生活に臨む心を軽やかにしてくれます。

Access:大山へはJR米子駅から大山寺エリアまで路線バスで約50分。

視座を上げ未来を見渡す
「八丈富士」
(富士箱根伊豆国立公園)

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伊豆諸島最高峰。火口の淵を歩く「お鉢巡り」で360度パノラマの絶景に身を置けば、抱えていた悩みも小さなものに思えてくるはず。物理的に視座を上げる体験が、あなたの新しい季節に新鮮な風を吹き込みます。

Access:羽田空港から飛行機で約55分。7合目登山口までは空港から車で約15分。

シンプルに自分を貫く
「薩摩富士」
(霧島錦江湾国立公園)

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海から突き上げる開聞岳。その立ち姿は潔く、唯一無二の存在感を放ちます。複雑な成り立ち(複式火山)を内側に秘めながら、表には凛としたシンプルさを漂わせる。情報に惑わされず「私は私」と胸を張る勇気を、この山から受け取ってください。

Access:鹿児島中央駅からJRで開聞駅へ。登山口までは駅から徒歩20分。

あなただけの「富士」を探して

かつての人々が、親しみと敬意を込めて各地の山を「〇〇富士」と名付けたのは、そこに富士山と同等の、あるいはそれ以上の誇りを見出していたからに他なりません。

もし、今のあなたが「こうあるべき」という理想に縛られて苦しいのなら、国立公園の豊かな自然の中に立つ、自由な富士たちに会いに行ってください。完璧な三角形ではないかもしれない。けれど、そのいびつさや、剥き出しの自然こそが、見る者の心を揺さぶり、新しい一歩を踏み出す勇気をくれるはず。

ところで、富士山の麓、大石公園にある「富士山の集いモニュメント」には、これら各地の石が一つに集められているんだそうです。本家を仰ぎながら、各地の多様な個性を想う。その旅から戻ったとき、あなたの心には、春の風を通すための心地よい「余白」が生まれているはずです。

Top image: © 環境省国立公園魅力発信Lab PR事務局
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。