届いた段ボールの「ニオイ」が怖い人へ。400円の梱包革命

株式会社G-Placeが運営するECサイト『Naturias(ナチュリアス)』が、化学物質過敏症・嗅覚過敏の方に向けた「特別梱包サービス」を正式に開始しました。段ボールを開ける瞬間のニオイが、誰かにとっては深刻な壁になっている。その現実に静かに向き合うサービスです。

「開封が怖い」
という声から生まれた新発想

©株式会社G-Place

ネットで届いた荷物を開ける。多くの人にとってはワクワクする瞬間でしょう。しかし化学物質過敏症や嗅覚過敏を抱える方にとっては、段ボールの接着剤やテープ、緩衝材のニオイが頭痛やめまい、吐き気を引き起こすきっかけになり得ます。

同サービスは、顧客から届いた切実な声がきっかけでした。「梱包材の臭いが商品に移るのを防いでほしい」「外気と触れないよう密封してほしい」——こうした要望を受け、昨年から試験的に実施。好評を得て2026年3月9日より正式サービスとしてスタートしたとのことです。

企業主導のCSR施策ではなく、当事者の声を起点に試行錯誤を重ねた結果だという点が印象的ではないでしょうか。

4ステップの「ケアする梱包」

©株式会社G-Place
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特別梱包は4段階で構成されています。まずPE(ポリエチレン)製の袋で商品を個包装し、バッグシーラー用テープで密封。輸送時の衝撃対策には新品の紙緩衝材のみを使い、プラスチック製緩衝材は不使用。最後に段ボールをニオイの少ないOPP(ポリプロピレン)製テープで「H貼り」して密封性を高めます。独特のニオイがあるクラフトテープは使いません。

従来の梱包が「商品を守る」ものなら、この特別梱包は「人を守る」設計。料金は400円(税込)で、完全無臭を保証するものではないと同社は明記しています。この誠実な注意書きもまた、当事者への寄り添いの表れに感じられます。

見えないバリアに気づく

化学物質過敏症は、合成香料や建材などの化学物質で全身に不調が生じる疾患です。確立された治療法はなく、原因物質を避けることが主な対策とされています。化学物質過敏症・対策情報センターによれば、国内の推定患者数は約1000万人。決して「ごく一部の人の話」ではありません。

車椅子対応のスロープや点字ブロックといった物理的バリアフリーは社会に浸透してきました。一方、「ニオイ」という目に見えない障壁への配慮は、まだ十分とは言えない状況が続いています。世界のパッケージデザイン領域でも「インクルーシブ(包摂的)であること」への関心は高まっており、梱包が障壁を取り除くものへと変わりつつある潮流の中に、ナチュリアスの取り組みも位置づけられるのではないでしょうか。

400円は、当事者にとって「安心して段ボールを開けられる」体験への対価です。誰もが当たり前に享受している「届く喜び」を、すべての人へ届けるために。梱包という裏方の仕事が、静かに変わり始めています。

Top image: © iStock.com / Masafumi_Nakanishi
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