Z世代の間で「二日酔い」をロマンチックに投稿するSNSトレンドが広がる

英「The Guardian」が報じた、Z世代の間で広がる不思議なトレンド。二日酔いを「恥」ではなく「美しいもの」としてSNSで発信する若者たちが増えているというのです。その背景には、意外な価値観の転換がありました。

ロマンティックコメディの主人公を演じる朝

TikTokやInstagramで、目の下にクマをつくりながらも晴れやかな表情で散歩する動画。キャンドルを灯し、カプチーノを淹れ、木漏れ日の中でKindleを読む——まるでインテリアカタログのような「二日酔いの朝」を投稿する若者たち

ある女性は動画にこうキャプションを添えています。「二日酔いをロマンチックに捉える。だって若いし、楽しい夜を過ごしたってこと。それってlowkey(控えめに言って)美しいこと」。

26歳のコンテンツクリエイターAllana Blumbergは、同紙の取材に対して「二日酔いをロマンチックに捉えることで、ベッドに沈み込むのを防げる」「ロマンティックコメディの主人公みたいな状況にいると自分を騙せる」と語っています。不調を否定するのではなく、物語の一場面として再編集してしまう発想がなんとも痛快。

キャンドルで不完全さを肯定

このトレンドの背景について、ドリンク系メディア「Punch」のシニアエディターMary Anne Portoは興味深い分析をしています。「人々はウェルネスカルチャーの話にうんざりしている」と。

バイオハッキング、制限的ダイエット、Ouraリングに象徴される身体最適化の波。ここ数年、SNSは「完璧に整った自分」を見せる場になっていました。Porto氏はこの二日酔いトレンドを、そうした文化への「ちゃっかりした反論」だと位置づけます。「気分が悪いことを美化すべきではないけれど、楽しい夜を過ごしたことで自分を責めなくていい。バランスを取ってもいいと言っているんです」。

ウェルネスを否定しているようで、実はウェルネスの文法——キャンドル、カプチーノ、丁寧な朝——を借用しているのが面白いところ。完璧主義のフォーマットで不完全さを肯定するという、なかなか高度な技をやってのけているわけです。

75%が「お金がないから」

もうひとつ見逃せないのが経済的な背景。飲酒文化についてのニュースレター「Fingers」を執筆するDave Infanteは、Z世代が「賢明な世代」として飲酒を避けているという通説は全体像を反映していないと指摘します。実際、ある調査ではZ世代回答者の75%が経済的理由から飲酒を伴う社交を控えていると回答しているそうです。

つまり、飲まないのは意識が高いからではなく、お金がないから。だからこそ、たまの夜遊びは特別なイベントになり、翌朝の二日酔いは「稀少な体験の記念品」として語る価値を帯びるのかもしれません。

日本でも「朝活」「腸活」「整う」といった自己最適化の圧力は強まる一方。飲み会の翌朝、罪悪感に苛まれた経験がある人は少なくないはずです。でも、もしその頭痛が「昨夜、大切な人たちと笑い合った証拠」だとしたら? 不完全な自分をゆるす技術は、案外こんな小さな朝の風景から始まるのかもしれません。

Top image: © Polina Kuzovkova / Unsplash
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