消えゆくネオン、その100年を一冊に。『NEONZINE』が記録した19人の物語

「関東ネオン業協同組合」が発表した一冊のZINEが、静かに話題を呼んでいます。タイトルは『NEONZINE(ネオンジン)』。国産ネオンサイン誕生100周年を記念し、ネオンと深く関わる19人のインタビューと8本のコラムを収録した116ページの小さな本です。

LEDに置き換わり、街から少しずつ姿を消しているネオンサイン。その「消えゆく光」を、なぜ今あえて紙の上に留めようとしたのか。ページをめくると見えてくるのは、ノスタルジーとはちょっと違う景色でした。

「ネオン街」は残ったのに光は消えた

ネオンサインが欧米で実用化されたのは1910年代のこと。日本に初めて国産ネオンサインが登場したのは1926年、場所は東京・日比谷公園でした。2026年はそこからちょうど100年の節目にあたります。

高度経済成長期には繁華街の夜空を埋め尽くし、「夜の街=ネオン」というイメージは日本語の慣用表現にまで染み込みました。「ネオン街」という言葉が今も生きているのがその証拠でしょう。けれど現在、実際にガラス管のネオンが光っている場所を思い浮かべようとすると、意外なほど手が止まります。

LED技術の普及によって、ネオンサインは「コストが高い」「メンテナンスが大変」という実務的な判断で次々と撤去されてきました。光源としての役割だけを見れば、LEDのほうが合理的なのは間違いありません

19人が語る、一本のガラス管の体温

©関東ネオン業協同組合

それでも、ネオンにしか出せない光があります。ガラス管の中で希ガスが放電することで生まれる、あのやわらかく揺らぐような発色。LEDの「ネオン風」照明を見慣れた目には、本物のネオンの光はどこか生々しく、体温に近い温かさを感じさせます。

『NEONZINE』が面白いのは、その光を「きれいだね」で終わらせないところです。登場する19人の顔ぶれは、第一線のアーティストから、ガラス管を一本一本手作業で曲げるネオンベンダー(職人)、業界を支えてきたレジェンド、店舗にネオンを掲げ続けるショップオーナー、そしてネオンに魅了されて修業を始めたばかりの若手まで、驚くほど多彩です。

ひとつの光源をめぐって、これだけ異なる立場の人間が語りうるという事実そのものが、ネオンという文化の厚みを物語っています。コラムではネオンが光る仕組みやガラス加工の技術も解説されていて、知識ゼロでも読める設計になっているのも好印象です。

「まだ消さない」と決めた人たちの記録

企画・編集を手がけたのは「となりか編集室」。発行元である公益社団法人日本サイン協会(前身は全日本ネオン協会)は、国内で唯一ネオンに関する活動を専門的に行う業界団体とのこと。つまりこのZINEは、ネオンの「当事者たち」が自らの手で記録を残そうとしたプロジェクトだといえます。

効率やコストで測れば、ネオンサインは過去の技術かもしれません。でも、手仕事でしか生まれない曲線、ガスの種類で変わる光の色、経年で微妙に表情を変えるガラス管——そうした「非効率の塊」にこそ宿る美しさを、私たちはほかの領域でもたくさん知っているはずです。

街を歩くとき、ふと頭上を見上げてみてください。もしそこにネオンの光が残っていたら、それは誰かが「まだ消さない」と決めた光です。その一本のガラス管の向こうに、100年分の物語が透けて見えるかもしれません。

©関東ネオン業協同組合

『NEONZINE(ネオンジン)』

【発売日】2025年5月15日
【仕様】116ページ/182×250mm
【価格】2,700円(税込2,970円)+送料
【購入方法】日本サイン協会ウェブサイト、一部ZINE取扱店・イベント会場にて販売

Top image: © iStock.com / AleksandarNakic
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。