「泊まる」より「たむろする」。長野・佐久にできた“大人のたまり場”

長野県佐久市に、ちょっと変わった一棟貸しの宿が誕生しました。名前は「TON(屯する家)」。手がけたのは、ブランディングやWebサイト制作を本業とするクリエイティブカンパニー・株式会社BUPPHAです。

「屯(たむろ)する」——用もなく集まって、ただ一緒にいること。この宿が売りにしているのは、絶景でも美食でもありません。

「誘う理由がない」から集まれない
大人のための宿という発想

©株式会社BUPPHA

思い返してみてください。最後に友人と「特に理由もなく」集まったのは、いつだったでしょうか。

学生時代は誰かの家にふらっと転がり込めたのに、年齢を重ねるほど「誘う理由」が必要になっていく。旅行を計画しても、LINEグループの日程調整は永遠に決まらない。

TONの出発点は、まさにその実感だったといいます。「特別な日じゃなくても、誘う理由がなくても、ただ一緒に居られたらいい」。宿のコンセプトにはそう掲げられています。

つまりこの宿は、「泊まる場所」ではなく「集まる口実」として設計されているのです。

「整う」より「途切れない」を選んだサウナ

TONの貸切サウナ内部。木張りの壁と天井に囲まれた広い室内に、複数人が並んで座れる長いベンチが向かい合わせに配置されている
© 株式会社BUPPHA

その思想がもっとも端的に表れているのが、サウナの設計です。

貸切サウナといえば、2〜3人用のコンパクトなものが主流。静かに蒸されて、ひとりで「整う」ための装置というイメージが強いかもしれません。

ところがTONのサウナは、最大8人が同時に入れる大型設計。「ひとりで静かに入る装置ではなく、会話が途切れない大きさの部屋として使いたかった」というのがその理由です。

サウナを「整う装置」ではなく「屯する部屋」と再定義する。デザイン会社らしく、空間の「意味」を先に決めて機能を後から載せるという順序が徹底されています。

豪華な体験より「なんでもない時間」の許可

暗い室内から横長の窓越しに広がる青々とした田んぼの風景。丸テーブルの上にはガラスの置物と小さなティッシュケースだけが置かれている
© 株式会社BUPPHA
キッチンカウンターに並ぶカラフルなマグカップ。赤・緑・青・黄の目玉付きマグと白いスタッキングマグが重ねて置かれている
© 株式会社BUPPHA

建物は1982年築の木造日本家屋を改装したもの。和の骨格を残しながら、DJブースのある畳の間や和紙作家による天板のダイニングテーブルなどを重ねた「NEO和室」に仕上げています。

BBQのできる庭、焚き火スペース、フルキッチン、プロジェクター。最大12名が泊まれる寝室4部屋。どの設備も「みんなで使う」前提で配置されています。

誰かにもてなされる「宿」ではなく、自分たちで遊び倒すための「家」。私たちが本当に欲しかったのは、豪華な体験ではなく「なんでもない時間を一緒に過ごしていい」という許可だったのかもしれません。

次の週末、誰かを誘う口実が見つからないなら、「佐久に面白い家があるらしい」——それだけで十分です。

TON(屯する家)

【所在地】長野県佐久市湯原38-6
【アクセス】東京駅から北陸新幹線で佐久平駅まで約70分、佐久平駅から車で約20分/軽井沢から車で約40分
【チェックイン/チェックアウト】13:00/12:00
【収容人数】最大12名(寝室4部屋)
【料金】一棟36,000円/泊〜(2名まで。3名以降1名ごとに+8,000円、7〜12歳+4,800円、6歳以下無料)。金・土は44,000円/泊〜。連泊割引あり
【ペット】同伴可(体重10kg以内・2頭まで、1頭5,000円)
【開業記念】宿泊料金30%OFFクーポンを先着30名に配布中(2026年10月31日宿泊分まで、除外日あり)
【公式サイト】TON 公式サイト
【予約】TON 公式予約サイト

Top image: © 株式会社BUPPHA
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。