主役は「つまようじ」。万博7,000人動員の舞台が、地場産業を物語に変える

つまようじが、舞台芸術の主人公になる。しかもコメディ音楽劇の。

思わず二度見してしまうこの企画、実は2025年の大阪・関西万博で約7,000人を動員した市民参加型シリーズの最新作です。大阪府河内長野市の文化振興財団が発表した、その名も『戦うな!つまようじ』。

かつて「国産のほぼすべて」を担った街の
静かな喪失

河内長野市は、かつて日本国内で使われるつまようじの大半を生産していた街です。クロモジやシラカバといった木材を使い、職人の手で一本一本つくられていました。

ところが、安価な海外産に押され、生産者は激減。いまでは伝統を受け継ぐ事業者はわずかしか残っていません。

こうした「かつて誇った地場産業が静かに消えていく」風景は、河内長野だけの話ではないでしょう。全国の地方都市が、似たような喪失を抱えています。

でも、この街が選んだのは、嘆くことでも経済的に復興させることでもありませんでした。「舞台の主人公にして、祝う」という道です。

「窮地のつまようじを喜ばせたい」
から始まった

音楽家サキタハヂメさんと俳優松村武さんの対談ビジュアル、公演の出演者・スタッフ情報を掲載したチラシ裏面
© 公益財団法人河内長野市文化振興財団

芸術監督を務めるのは、作曲家でミュージカルソー奏者のサキタハヂメさん。NHK連続テレビ小説『おちょやん』の音楽などで知られる人物です。

ミュージカルソーとは、のこぎりを弓で弾いて演奏する楽器のこと。その独特の音色を武器に、サキタさんは「窮地に立たされたつまようじを喜ばせる舞台を創る!」と発案しました。

「世界で一番頼りない主人公」。このキャッチコピーが、すべてを物語っています。

弱さや小ささを隠すのではなく、堂々と掲げる。すると不思議なことに、それが唯一無二の個性になる。衰退していること自体が、笑いと共感を生む物語の資源に変わるわけです。

万博の「遺産」を
地元の小ホールに持ちかえる

カラフルな民族衣装を着たブルキナファソの演者と太鼓を演奏する出演者、観客と共演するステージの様子
© 公益財団法人河内長野市文化振興財団
つまようじワークショップに参加した親子連れら大勢の参加者が笑顔で記念撮影する集合写真
© 公益財団法人河内長野市文化振興財団

前作にあたる2025年の万博公演では、ブルキナファソやチェコ共和国のアーティストと市民あわせて約400人が出演し、大きな反響を呼びました。

今回の公演にも、万博でブルキナファソパビリオンのディレクターを務めたミロゴ・ベノワさんが参加。万博で生まれた国際的なつながりを、地域の舞台に還元する「万博レガシー」として位置づけられています。

舞台の外にも仕掛けがあります。つまようじから新しい楽器を生み出すワークショップや、ふるさと納税型のクラウドファンディングを通じて、「公演が終わっても残る文化」を設計しようとしているのです。

地場産業を「救う」のではなく「祝福する」。このアプローチは、私たちが暮らす街の忘れられかけた資源にも、まだ別の光の当て方があることを教えてくれます。

奥河内音絵巻2026 vol.12『戦うな!つまようじ』

【日程】2026年9月13日(日)11:00開演/15:00開演(2回公演)
【会場】河内長野市立文化会館(ラブリーホール)
【料金】前売3,500円/当日4,000円(自由席・税込)、小学生以下無料(要整理券)
【主催】公益財団法人河内長野市文化振興財団
【公演詳細】ラブリーホール公式サイト
【クラウドファンディング】ふるさとチョイスにて受付中

Top image: © 公益財団法人河内長野市文化振興財団
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