Z世代の最新侮辱語は「ポリエステル」。素材名が人格を測る時代に

「ポリエステル」と聞いて、まず思い浮かぶのは服のタグに書かれた素材表示でしょう。ところがいま、英語圏のZ世代はこの言葉をまったく別の意味で使い始めています。「安っぽい」「薄っぺらい」「本物じゃない」——人やコンテンツの質を断じる、新しい侮辱語として。

「ポリエステルなライフスタイル」が4万いいね

USA TODAYが2026年8月に報じたところによると、きっかけのひとつはTikTokに投稿されたある動画でした。

18歳の若者が語る「理想の一日」は、ニューヨークのペントハウスで朝6時に起き、仲間と聖書を学び、Claudeエージェントに仕事の半分を任せるというもの。

一見キラキラした内容ですが、トップコメントにはこう書かれました。「Polyester lifestyle(ポリエステルなライフスタイル)」。4万件以上の「いいね」がつきました。

つまり、「それ、全部つくりものでしょ」という一言が、素材名ひとつで完結してしまったわけです。

このスラングの背景には、ここ数年で高まったポリエステル素材そのものへの不信感があります。TikTokやXでは「クローゼットからポリエステルを追い出す」という投稿が数百万回再生され、コットンなど天然素材への回帰が若い世代の間で加速していました。

配信者が100%ポリエステルのグッズを販売して「ポリエステル王子」と揶揄されたり、オオカミ柄のTシャツやギャラクシー柄のパンツといった全身ポリエステルの服装がコメディ動画でパロディ化されたり。素材のヒエラルキーが、そのまま「ダサさ」の記号になっていったのです。

不信の時代が生んだ「品質チェック」の言語

興味深いのは、この言葉が服だけでなく、動画編集の世界にも飛び火していること。2025年秋にTikTokで共有されたスパイダーマンのピーター・パーカーの高速カット動画は「Polyester Spider-Man Edit(ポリエステル・スパイダーマン・エディット)」と名づけられ、サッカー選手クリスティアーノ・ロナウドの編集動画にも同じ形容がつきました。

過剰に加工された、中身のない派手さ。それを一語で切り捨てる道具として「ポリエステル」が選ばれたのです。

メディア心理学者のドン・グラント氏(Newport Healthcare)は、Z世代について「オンラインのすべてが社会的通貨であり、アイデンティティの試金石となる環境で育った」と指摘しています。

24歳のモーガン・ハーロック氏も「Z世代は全員、すべての動画に不信感を持ちながらスクロールしている」と語っています。AIが生成したコンテンツや広告が溢れるフィードの中で、「これは本物か?」を瞬時に判定する感覚が、言葉のレベルにまで染み出しているのでしょう。

素材リテラシーが「人を見る目」になる時代

日本でも、ファストファッションへの疑問や「量より質」の消費意識は確実に広がっています。服の素材タグを確認してから買う人も増えました。

でも、その感覚が「あの人の生き方、ちょっとポリエステルだよね」という人格評価にまで拡張されるとしたら——それは少し立ち止まって考えたくなる話です。

自分が何を着て、何を選び、どんな言葉を使っているか。それが誰かの「品質チェック」にかけられている。息苦しさを感じる一方で、「本物でありたい」という切実さの裏返しでもあるのかもしれません。

素材名ひとつが侮辱語になる現象は、Z世代が「真正性」への渇望をどれほど抱えているかの証でもあります。

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