若者のジム通いが急増する理由。Z世代の価値観と「持ち家離れ」の関係
家を買って、週末にペンキを塗る。庭のフェンスを直す。そんな「大人の休日」が、いつの間にか遠い話になりました。
代わりに若い世代が夢中になっているのは、ジムでのワークアウト。しかもこれは単なる健康ブームではなく、もっと根深い価値観の転換かもしれません。
18〜24歳の36%がジム所属
「過去最高」の背景にあるもの
「CNN」が2026年7月に報じた記事は、アメリカの若者のジム熱を経済と人口動態の両面から読み解いています。
業界団体Health and Fitness Associationの調査によると、35歳未満のジム会員数は2019年から2025年にかけて、他の年齢層より速いペースで増加しました。
18〜24歳の約36%がジムに所属しており、これはどの年齢層でも過去最高の数字です。
しかも、Z世代やミレニアル世代は月額のジム会費でも上の世代より多く支出しているといいます。
要因としてよく挙がるのは、SNSの影響や飲酒離れ、対面コミュニケーションへの渇望。でも記事の筆者は、もっと大きな構造的変化が見落とされていると指摘します。
それは、結婚・子育て・持ち家の取得が遅れている、あるいは手が届かなくなっているという現実です。
「自分の身体」だけは
裏切らないという信頼
同団体のデータでは、10年前には20〜40歳のジム会員の半数が既婚でしたが、2025年にはわずか3分の1に。子どもがいる割合も36%で、10年前から8ポイント下がっています。
かつてのアメリカンドリームは「改修する家と、そこに住む子どもたち」でした。週末のDIYプロジェクトは、大人としての達成感やアイデンティティを支える儀式だったのです。
その儀式から経済的に締め出された世代が、代わりに見つけた「プロジェクト」が自分の身体だった——記事はそう読み解きます。
The New Schoolの歴史学者でフィットネスインストラクターでもあるNatalia Mehlman Petrzela氏は、「CNN」の取材にこう答えています。
「住宅が手の届かないものになり、雇用は不安定で、AIがすべてを変えようとしている。そんな不確実な世界で、自分の身体に取り組めば結果が出るという事実ほど信頼できるものはない」
日本の「サウナ・パーソナルジム」熱も
同じ構造では?
この話、どこか他人事に聞こえないのではないでしょうか。
日本でも晩婚化や非婚化は加速し、持ち家率は若い世代ほど低下しています。一方で、パーソナルジムやサウナ、ウェルネス関連の消費は右肩上がり。
「家のローン」の代わりに「月額のジム会費」が、人生の充実度を測るものさしになりつつある。そう考えると、日本とアメリカで起きていることの根っこは、驚くほど似ているのかもしれません。
身体を鍛えることが「趣味」や「健康管理」の枠を超えて、不確実な時代を生きる若者にとっての「唯一コントロールできる不動産」になっている。
その切実さと前向きさが同居する風景を、私たちはもう少し丁寧に見つめてもいいのではないでしょうか。






