クレジットカード離れが進むZ世代。彼らが求める新しいお金との向き合い方
かつて、クレジットカードは経済的な自立への第一歩と見なされ、多くの若者が手に入れることを渇望した。
しかし、現代のZ世代にとって、その認識は大きく変わりつつあるようだ。モバイル決済アプリCash Appが実施した最新の調査によると、Z世代の半数以上がクレジットカードを「時代遅れ」「不安を煽る」「自分たちのお金の管理方法と合わない」と感じているという。
この背景には、彼らが直面する経済的な現実と、新しい価値観が存在する。
ストレスと不安の象徴?クレジットカードがZ世代に与える「不快感」
Morning Consultが実施した調査では、Z世代の回答者の68%がクレジットカードの請求書にストレスや不安を感じ、半数以上がクレジットカードに「不快感(ick)」を抱いていると認めた。
「不快感(ick)」とは、元々は恋愛関係で相手の些細な行動に幻滅する感覚を指すスラングだが、ここではクレジットカードに対するネガティブな感情を端的に表している。
Cash App Afterpayのファイナンシャルセラピストである Lindsay Bryan-Podvin 氏は、「Z世代がクレジットカードに不快感を覚えるのは、高い金利や分かりにくい規約のためだけではない。時代遅れで不安を煽るものだと感じているからだ」と分析する。
「彼らはリアルタイムでの明確さ、構造、そしてコントロールを求めている。だからこそ、より透明性が高く柔軟性のあるデビットカードやBNPL(Buy Now, Pay Later:後払い決済サービス)のような代替手段を受け入れている」と指摘する。
新しいセルフケアとしての「金融的ウェルネス」
透明性とコントロールを重視
Z世代にとって、経済的な健康は身体的・精神的な健康と同じくらい重要な意味を持つ。
Bryan-Podvin 氏は、「Z世代はセルフケアの価値観を金融的ウェルネスにまで広げている。彼らは使いやすさ、自律性、そして精神的な幸福をサポートする支払い方法を優先している」と述べる。
実際に、金融情報サイトBankrateの調査によると、多くの若年成人はデビットカードを好み、68%がクレジットカードよりもデビットカードを選んでいる。
多くの消費者は、明確な支払い条件が提示され、隠れた手数料や膨らむ利息の恐怖がないツールに、より大きな安心感を見出している。Bryan-Podvin 氏によると、Afterpayの顧客の90%が、追加のストレスなくキャッシュフローを管理するために、分割払いにデビットカードを紐づけているという。
経済的混乱の時代に育ったZ世代が持つ、借金への強い警戒心
Z世代がこのような金融観を持つに至った背景には、彼らが成長期に経験してきた経済環境が大きく影響している。彼らは、増え続ける負債、インフレ、そして高騰する生活費といった経済的な混乱の中で成人期を迎えている。
NewsweekのためにTalker Researchが行った世論調査によると、Z世代は平均個人負債額が94,101ドルと最も高く、ミレニアル世代やX世代をはるかに上回っている。高騰する学費ローンや日々の生活費といった経済的圧力により、多くのZ世代消費者は基本的なニーズを満たすためにクレジットカードに頼らざるを得ない状況に置かれている。
フィンテック企業TomoCreditのCEOである Kristy Kim 氏はNewsweekに対し、金融教育の欠如と経済的圧力の高まりが、多くのZ世代をクレジットカードへの依存に追い込んでいると語る。
適切な金融リテラシーがなければ、若年成人は増え続ける残高の管理に苦労し、高額な利息の支払いに直面することになる。
Kim 氏は、若年期の借金が住宅購入や退職といった人生の大きな節目を遅らせる可能性があると警告し、「この傾向は、より深刻な経済問題になる前に、より良い金融教育、責任ある融資慣行、そして上昇する生活費に対処するための政策が緊急に必要であることを浮き彫りにしている」と述べる。
ニューヨーク連邦準備銀行の最近の報告書は、クレジットカードの支払い遅延が懸念されるほど増加しており、Z世代のクレジットカード利用者の10%以上が直近の四半期に延滞状態に陥っていることを示している。
金融専門家の Bobbi Rebell 氏はUS Newsに対し、Z世代の課題はより広範な経済的変化に根差していると指摘。「ブーマー世代やX世代にとって、教育や住宅を含め、生活はもっと手頃なものだった。今日の若年成人は、高インフレと停滞する賃金と戦っており、すでに重い負債の負担にさらなる圧力がかかっている」と語る。
Z世代にとって、クレジットカードは資産ではなく負債と見なされている。「Z世代にとって、クレジットカードを使うことは、実際には持っていないお金を使っているように感じられることがある」と Bryan-Podvin 氏は説明する。
「クレジットカードは支出を簡単に感じさせるように作られているが、簡単すぎると危険な場合がある」。彼女の金融セラピーのクライアントの一人は、かつてクレジットカードを「借金カード(debt card)」と捉え直したことで、すぐに支出行動が変わったという。このような意識の転換が、世代全体で起こっているのかもしれない。
Z世代が金融の規範を再構築し続ける中で、金融機関も進化し、透明性、コントロール、そして長期的な金融的ウェルネスに対する彼らの要求に応えるソリューションを提供していく必要に迫られるだろう。
彼らの価値観を理解し、それに応じたサービスを展開できるかどうかが、今後の金融業界の鍵を握ることになりそうだ。