静岡発「空き家謎解きゲーム」手放せない実家が、誰かの冒険になる

不動産の世界で「残置物あり」「接道なし」と聞けば、それは価値を下げる減点項目です。ところが静岡市で始まった、ある謎解きゲームの空き家募集要項には、それらがそのまま歓迎条件として並んでいます。

会場となる静岡市の空き家の外観。3階建ての隣家に接する二階建て住宅で、バルコニーや植栽が見える
© 維新エンターテインメント株式会社

不動産の「弱点」が
物語の「強み」に裏返る

謎解きゲームの会場となる空き家の居間。座布団や机が並び、たぬき探偵ジェリーのパネルやテレビが置かれた生活感の残る空間
© 維新エンターテインメント株式会社
和室に置かれた古い鏡台とタンス、扇風機など、当時の生活用品がそのまま残された空き家の一室
© 維新エンターテインメント株式会社

維新エンターテインメントが2026年9月に開始した「空き家謎解きゲーム」は、実際の空き家を一軒まるごと会場にした探索型の体験ゲームです。

参加者は家の中に残された手紙や小物を手がかりに、60分の制限時間で謎を解いていきます。居間、和室、台所。家具や生活用品がそのまま残る空間が、そっくり舞台装置になる設計です。

注目すべきは、同社が掲げる空き家の募集条件でしょう。月額賃料3万円を同社が支払い、水道光熱費も負担。そして歓迎条件として挙げられているのが、前面道路に接していない物件、残置物が多い物件、思い出があって手放したくない物件。

不動産広告なら絶対に書かない文言が、ここでは堂々と並んでいます。接道していない家は再建築が難しく、通常の取引では大きなハンデ。でも謎解きの舞台としては、たどり着きにくい場所こそ秘密基地感が増します。残置物も、物が多いほど手がかりが増え、ゲームの密度が上がるというわけです。

「売りたくないから決められない」
385万戸の第三の選択肢

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高を更新しました。賃貸や売却用を除いた、いわば宙に浮いた空き家は約385万戸にのぼります。

同社代表の武友淳氏はこう語っています。「所有者は売れないから困っているのではなく、売りたくないから決められない。空き家の問題はむしろそういう家のほうが多い」。

第1号物件は、同社の謎解き店舗に貼っていた募集の貼り紙がきっかけでした。2025年12月、3年前に亡くなった祖母の家を持て余していた所有者からの相談が、第1作「おばあちゃんの遺産の謎」の着想源になったそうです。

2026年8月の先行公演ではチケットが約4時間で完売。参加者アンケートの満足度は10点満点中9.42点で、印象に残ったものの1位は「家の探索」でした。

実家の相続や空き家の処分は、多くの人にとって現在進行形か近い将来の課題ではないでしょうか。「片付けなきゃ」「売らなきゃ」というプレッシャーのなかで、そのままでいいという選択肢が提示されていること自体が新鮮です。

手放せない家が、誰かのワクワクする体験の舞台になる。同社は2031年までに全国150棟への展開を目指すとしています。

おばあちゃんの遺産の謎

【開催日】2026年9月19日(土)以降の土日祝
【公演時間】10:00/12:30/15:00/17:30(各回約90分、本編60分+説明・解説)
【定員】1組2〜6名(貸切制)
【料金(税込)】2名 10,000円/3名 13,500円/4名 16,000円/5名 20,000円/6名 24,000円
【推奨年齢】13歳以上
【会場】静岡駿河区F邸(詳しい住所は予約者に前日までにメールで案内)
【予約】空き家謎解きゲーム予約ページ
【公式サイト】空き家謎解きゲーム
【空き家の提供についての問い合わせ】空き家所有者向け募集ページ

Photo: © 維新エンターテインメント株式会社
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