謎を解くうち、誰かの人生が見えてくる。学校跡地で始まる120分の物語体験

一般社団法人Empactが、精神疾患のある親をもつ子ども・若者を支援するNPO法人CoCoTELIと共同で制作した体験型ミステリー公演『あの日継がれた幕を引く』。2026年8月22日から飯田橋の学校跡地で開演するこの公演が、いま静かに注目を集めています。

当事者NPOが「監修」ではなく
脚本から関わる、日本初の体験型公演

飯田橋の学校跡地にある教室スペース。黒板・大きな窓・蛍光灯が残る空き教室で、公演会場となる実際の空間
© 一般社団法人Empact

精神疾患のある親のもとで育つ子ども・若者は、日本にも少なくありません。けれど、その存在は社会の中でなかなか可視化されにくい。

CoCoTELIはまさにその支援に取り組むNPOですが、ひとつの壁にぶつかっていたといいます。講演や記事で発信しても、届くのは「もともと関心のある人」ばかりだったのです。

そこに現れたのが、「社会貢献をワクワクする身近なものに」を掲げるEmpactでした。両団体は半年にわたって物語の構想から脚本、体験設計までを共同で議論。

当事者支援NPOが「監修」や「後援」ではなく、企画・脚本段階から共同制作者として参画する体験型公演は、日本初の試みだといいます(2026年7月時点、同団体調べ)。

「善意だから粗くていい」を退けた
謎解きと社会課題の溶かし方

教室の机に置かれたタブレット端末。画面には18:30の時刻表示と、青空の下でトロフィーと賞状を掲げる学生たちの写真が映っている。周囲にはダンボール箱やトロフィーが散らばっている
© 一般社団法人Empact

舞台は架空の「照里高校」。参加者は高校1年生として入学し、かつて全国優勝を果たした演劇部がなぜ廃部に追い込まれたのか、旧部室に残されたタブレットとメモを手がかりに真相を追います。

注目したいのは、Empactの制作方針。「まず何より面白い体験型ミステリーであることに一切妥協しない」と明言しています。

社会課題を扱うコンテンツには、ときに「善意だから多少の粗さは許される」という空気がまとわりつくことがあります。でも、この公演はその甘さを明確に退けている。

CoCoTELIの現場知見は、登場人物の言葉遣いや振る舞いの細部に溶け込んでいるそうです。「社会課題を学ぶパート」と「謎解きを楽しむパート」が分かれているのではなく、物語を追ううちに自然と他者の人生に触れている設計です。

6万インプレッション、完売枠も
「遊びの余韻」が届ける現実

青空を背景にトロフィーを高く掲げる手と、賞状やピースサインを見せる学生たちの手元。アニメ調のイラストで、かつての演劇部の栄光を象徴するカット
© 一般社団法人Empact

両団体の代表はどちらも2001年生まれ。Empact代表の林栄佑氏はマッキンゼーを経て2025年に団体を設立し、CoCoTELI代表の平井登威氏は幼少期に父親がうつ病を発症した経験から支援活動を始めた人物です。

SNSでの告知投稿は6万インプレッションを超え、公演開始前にすでに完売枠も出ているとのこと。

私たちの日常には、「知らなかっただけで、すぐそばにあった現実」がたくさんあります。それに気づくきっかけが遊びの余韻から来るとしたら──届け方ひとつで、届く相手はまるで変わるのかもしれません。

あの日継がれた幕を引く

【開催期間】2026年8月22日(土)〜8月30日(日)全17公演
【公演時間】土日 13:00/16:00/19:00、平日 19:00
【所要時間】約120分(ゲーム時間70分)
【会場】飯田橋 学校跡地(東京都新宿区揚場町2-28、飯田橋駅B4b出口より徒歩約2分)
【チケット】一般 3,500円/グループ4枚 12,000円/小学生以下 1,000円
【推奨年齢】小学生以上(未就学児入場可、小学生以下は保護者同伴)
【チケット購入】escape.id
【公式サイト】一般社団法人Empact

Top image: © 一般社団法人Empact
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。