ワニは成長が遅い──未解明の謎を解くカギは、古代の「大量絶滅」だった!
ワニの成長が極端に遅いことをご存知だろうか?
現存する種の中でワニに最も近い鳥類は、1年未満で成体サイズに達する。特に、ニワトリの場合は約150日とかなりスピーディーである一方、ワニは最大のサイズになるまでに何年もかかるのだ。
進化の過程でいつ、どのように、なぜ遅くなったのかはこれまで解明されていなかったのだが、『Current Biology』誌に掲載された最新の研究により、そのヒントが掴めてきた。
いわく、ワニは約2億年前(中生代三畳紀後期)から成長速度が遅かったということが明らかになったらしい。
三畳紀のワニは、水で待ち伏せしながら暮らす現在の種とは違い、陸上で活発に動き回っていたという。よって、これまで現存するワニの成長の遅さは「座りっぱなしの半水棲生活への進化」が影響していると考えられてきた。
しかし、今回の研究で三畳紀(陸上で暮らしていた頃)の時点で成長が遅かったことが分かり、その説は否定されることとなった。
また、チームは南アフリカの約2億1000万年前の地層から発見された巨大なワニの化石についても研究した。
現存するワニの「かなり初期の種」であるとされるこの巨大な爬虫類も、やはり成長速度が遅かったことが分かった。この種は、恐竜など当時のほかの大型爬虫類に比べてもかなり遅かったようだ。
そして、ほどなくして三畳紀末に大量絶滅が起こったわけだが、ワニは成長が遅いものだけがなんとか生き残ったのだそう。反対に恐竜は、成長が早いものだけが生き残ったという。
この時点で、成長の早い恐竜と遅いワニ、つまりその子孫である現代の鳥類とワニに、著しい成長速度の違いが表れたのだ。
完全に解明されたわけではないが、長年の謎を解くカギは、この大量絶滅にありそうだ。これをヒントに研究が進むことを期待したい。