「推し」を失った悲しみは、ただの趣味じゃない。心の痛みに寄り添う一冊

画面の向こうにいた人が突然いなくなったり、夢中だったグループが解散したりしたとき、胸にぽっかりと穴が開くことがあります。

「ただの趣味」と片づけられがちな痛みに、大切な人を失った悲しみに寄り添う専門的なケアの視点を届ける一冊が届きました。

「会ったこともないのに」と
否定される痛みの正体

株式会社インプレスが2026年9月25日に発行したのが、臨床心理士の倉西宏さんによる書籍『推しの死 悲しみを抱いて生きるグリーフケア』です。

著者の倉西さんは、京都文教大学の准教授として学生たちの喪失体験に触れるなかで、推しを失った衝撃が身近な人との死別と非常によく似た構造を持つことに着目したといいます。

本人にとっては自分の一部を失うほどの出来事であっても、周囲からは「一度も会ったことがない相手なのに」と軽く受け止められてしまいがちです。

社会的に認められにくい悲しみは、臨床心理学において「非公認の悲嘆」と呼ばれ、誰にも気持ちを分かってもらえない孤独を生み出す要因になるとのことです。

画面越しの存在や二次元のキャラクターであっても、心の支えになっていたのなら、その別れがもたらす傷の深さに違いはないと同書は伝えています。

悲しみを消さずに
抱いて生きるための3つの道

大きな痛みに直面したとき、早く忘れようとしたり、無理に元気を出そうと焦ったりしてしまう人は少なくありません。

しかし同書では、回復の形を「悲しみを消すこと」ではなく「悲しみとともに生きること」と捉え直す姿勢を提案しています。

心に生じた揺らぎを抑え込むのではなく、感情を外側へ出して再び自分のなかに収めるアプローチとして、「語ること」「物語」「表現」の3つが示されています。

推し活そのものが持っていた表現の力を生かし、感情を形にしながら自分を取り戻していく道筋が、臨床の知見から丁寧に紐解かれます。

大切な存在を失った痛みを否定せず、悲嘆を抱えたまま歩き出すための拠り所として、多くの人の心を静かに支えてくれるのではないでしょうか。

©株式会社インプレスホールディングス

書籍『推しの死 悲しみを抱いて生きるグリーフケア』

【著者】倉西 宏
【発行日】2026年9月25日
【価格】電子書籍版 1,600円 税別/印刷書籍版 2,000円 税別
【仕様】四六判、168ページ
【発行元】インプレス NextPublishing
【詳細】公式サイト

Top image: © iStock.com / LuckyDuck
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。