海外で話題の「拒絶療法」。断られる勇気のススメ
人に何かを頼むとき、思わず身構えてしまうことはないだろうか。「もしも断られたらどうしよう……」そんな不安や恐怖を緩和していくために、今SNS上ではRejection Thrapy(リジェクション・セラピー)がトレンドになっている。直訳するなら、「拒否療法」。
多くの人のなかに根付く「No」と言われることへの恐怖感や、それが悪いことであるかのような意識。それって本当に正しいのだろうか?
あえて拒絶を経験する自己啓発術
リジェクション・セラピーとは?
どうやらリジェクション・セラピーとは、「No」と言われることに恐怖を感じる人々がこの恐怖や不安を緩和させるために行う療法のことのようだ。
「CNN」が紹介したところによると、このセラピー、至って簡単で、道行く人にいきなり奇妙な質問をぶつけ、断られるだけ。意図的に拒絶される状況を作り出し、経験することで、恐怖心や不安感を克服しようという自己啓発の手法のようだ。
CNNによれば、2010年にカナダ人起業家Jia Jiang氏が考案したとされている。Jiang氏は、自身のブログで、毎日、誰かに頼みごとをして断られるという挑戦を100日間続ける「100 Days of Rejection」というプロジェクトをTED Talksにて公開し、話題となった。
拒絶に耐性をつけることで、恐怖心や不安を克服する。荒療治と言えばそれまでだが、これが効果的なのだそう。
「No」を恐れない強さを手に入れる
30日間このセラピーに挑み、チャレンジの記録をTikTokに上げたのはMichelle Panning氏。彼女はもともと自身のSNSに恋愛、セックス、そして交際関係についてのアドバイスを投稿していた。Jiang氏のTED Talkを聞いたあと、 Panning氏は自身でもこの療法を紹介したいと感じたという。
彼女はその後自身のTikTokアカウントで道行く人にハグを頼んだり、洋服売り場でマネキンになってもいいか聞いたり、サンドウィッチ店で自分でサンドウィッチを作ってもいいか聞いたりする動画を上げ始めた。
チャレンジを始めた当初は質問を投げかけるたびに気合を入れ、来るであろう「No」に備えていたが、30日が過ぎると知らない人に質問を投げかけることを気楽に感じるようになったという。断られることへの不安が緩和されていったことがわかる。
リジェクション・セラピーの本質
バージニア州在住の公認臨床心理士であり、エクスポージャー療法の専門家であるTaylor Wilmerはリジェクション・セラピーについて、これはエクスポージャー療法の一種だと説明。自身をすこしずつ恐怖を感じる状況下に晒していき、段階的にその恐怖を克服していくエクスポージャー療法は、トラウマの克服や不安症の治療に用いられている。
また、ニュージャージー州在住の心理療法士であり、Awake Therapyの創設者であるJourdan Traversは、この挑戦は自分自身をよりよく知り、不安といった不快な感情を理解することを助けると語る。
しかし、もしもあなたが小さな質問をすることにさえ大きな不安を感じるならば、こうした療法ではなく、心理ケアの専門家に頼ることをおすすめしたい。
注意しなければならないのは、この療法によって耐性をつけることができる感情は、意中の人に振られたとき、面接に不合格だったときのような状況で受け取る感情とは別のものであるということ。自分の強く望んでいることに「No」が突きつけられる方が苦しいということである。
また、この自己啓発のトレンドは、人々が拒絶をうまく処理できることを示し、「物事は、不安な脳が伝えるほど悪くならない」ことを示すのに役立つのかもしれない。