マクドナルドが、トレードマークである「スマイル」をあえて消してみたら……
世界各地で続く紛争、爆発的な人口増加による食糧危機、そして歯止めの効かない地球温暖化……いつか世界は荒廃し、あの「マクドナルド」からも笑顔が消え去ってしまったとしたら……。
少し誇張してしまったが、あり得なくもない話。事実、イギリスのマクドナルドが、ハッピーミールのボックスから象徴ともいえる「スマイル」マークを削除してしまったらしい。
消えた「スマイル」
そして……さまざま“感情”が
英マクドナルド限定で行われるこのキャンペーンは、毎年5月に行われるメンタルヘルス啓発週間に「感情」について、家族間のコミュニケーションを促進するために始まったもの。
マクドナルドが長年スローガンとして掲げてきた「I'm lovin' it」は、シンプルかつポジティブなメッセージとして知られているが、同社は思い切って、イギリスの子どもたちのほぼ半数(48%)が「常に幸せそうな振る舞いをしなければならないプレッシャーを感じている」という側面があることを公表。
SNSの普及や社会的不安に、経済的困難。大人でさえ笑顔が失われつつある時流は、敏感な子どもたちにも伝わっているようで、大人たちのためにあえて「子どもらしい振る舞い」をしてくれている。ということらしい。
そんな時代を憂いたマクドナルド。「It's okay not to feel happy all the time(いつも幸せじゃなくても、大丈夫だよ)」というメッセージを込め、お馴染みのスマイルマークの代わりにさまざまな口の表情で感情を表現できるステッカーが同封された限定ボックスを発売した。
今までは「:)」の一択だったシンボルマークは「:(」や「:|」をはじめとしたナチュラルな感情を表現できるように。「〜」なんていう、微妙な口の動きを表すこともできてしまうらしい。
ネガティブも、大切な感情だ
時を同じくして、マクドナルド公式YouTubeには子どもたちの本音を綴ったある動画が投稿された。
「自分の感情がわからない」
「たまに、一気にいろんな感情を感じちゃう」
と、子どもながらに本音を語る彼らは、ステッカーを手にしたことで表現しにくい感情さえも赤裸々に打ち明けられるように。
「ぼくはconfused(困惑する)を選んだよ。だって、すごくいいことだから」
そんな言葉に筆者は思わず、うるっときてしまった。子どもであれば、明るく元気に振る舞うことを何かと強要されてしまいがちな社会だが、時には自身がもつさまざまな負の感情を愛でてあげることも、私たち大人が教えてあげなければならないことの一つだろう。
子どもたちの幸せについて考え抜いた先にあった“答え”ともいえる、彼らなりのアプローチ。粋だなあ……。