勝敗を分ける「0.05秒」。競泳リレーの飛び出しを変えた8週間の研究

プールサイドの台の上で、前の泳者が壁に迫る瞬間を見つめ、タイミングを合わせて飛び出す競泳のリレー種目。

勝敗を左右する引き継ぎの瞬間について、株式会社ルネサンスと新潟医療福祉大学が2026年9月に画期的な研究成果を発表しました。

前へ踏み出すロングステップで
引き継ぎ時間を大幅短縮

リレーで前の泳者が壁に触れてから次の泳者が台を離れるまでの時間は、引き継ぎ時間と呼ばれます。

このわずかな隙間を縮めるため、台の後方に立って構え、大きく前へ一歩を踏み出して飛び出す手法があります。それがロングステップです。

同社のスイミングコーチである星川慎吾氏と新潟医療福祉大学の下門洋文准教授らは、普段この手法を使っていない大学生選手10名を対象に実験を行いました。

陸上での筋力訓練とプールでの技術練習を8週間続けたところ、跳び出すまでの時間は平均0.31秒から平均0.05秒へと大きく縮まりました。

恐怖心を減らす段階的ドリルが
引き出した体の鋭い反応

プールサイドでのドリル練習からゴムチューブを使った抵抗ステップ、スタート台からの個別スタート、レースを再現した引き継ぎ実戦ドリルまでの4段階の練習工程
© 株式会社ルネサンス

一瞬の飛び出しは、これまで選手の度胸や天性の反射神経によるものと考えられがちでした。

しかし研究チームの分析によると、訓練を受けた選手は重心が低く保たれ、後ろ脚の太ももの裏側の筋肉を素早く使って鋭く飛び出していました。

さらに心理面の調査では、練習を段階的に重ねることで、選手が飛び込みに対して抱く恐怖心がはっきりと減っていたことが分かりました。

恐怖を取り除くことで迷いなく台を蹴る姿勢が生まれ、世界大会の決勝に並ぶ素早いスタートが可能になったと同社らは説明しています。

学校と民間の水泳教育をつなぐ
安全な指導の指標へ

研究の成果は今後、同大学の水泳部で選手の育成に活用される予定です。

同時に、この知見は学校の教育現場が抱える課題を支える手立てとしても注目されています。

近年は施設の老朽化や教員の負担を減らすため、学校の水泳授業を民間のスイミングスクールへ委託する動きが広がっています。

水への飛び込みは事故の不安がつきまとう指導ですが、恐怖心を科学的に和らげる手順が示されたことは、安全な指導の確かな指標になるのではないでしょうか。

Top image: © 株式会社ルネサンス
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