【想像以上!】フィンランドのゴルゴ13、伝説の狙撃手「シモ・ヘイヘ」の物語 ー HONZ書評

さまざまなエピソードが伝説としてネットの中で流布している。「シモ・ヘイヘがいるという林の中に足を踏み入れた1時間後に小隊が全滅した」「いとも簡単に1分間に150mの距離から16発の射的に成功した」

ウソのような話ばかりだが、この本を読めば、事実がネタ以上であることがわかる。小銃を片手に、極寒の森に潜み、防寒のために着込んだ服の上にさらに真っ白な雪中用偽装服をまとう。射撃用スコープは太陽光を反射してしまい、敵に居場所がわかってしまうので、使わない。射撃姿勢を取り、呼吸を一定に保ち、ひたすら待つ。そして敵の姿が目に入ると、息を吐きながら撃つ。

なんと542人もの敵を殺害し、白装束から「白い死神」とまで呼ばれたシモ・ヘイヘ。でも彼はフィンランドの英雄だ。その背景には、フィンランドのつらい歴史がある。

フィンランドは12世紀にスウェーデンの領土になってから、ずっと他国に支配されてきた。しかし20世紀、ロシア革命のどさくさでついに念願の独立を果たす。しかしソ連はフィンランドに100万人を超える軍隊を送り込み、占領しようとする。しかし迎えるフィンランド軍は、わずか25万人。これが歴史に名高い「冬戦争」だ。兵器も弾丸も圧倒的に不足している中で、フィンランド軍は敵から奪った兵器や弾丸を活用し、火炎瓶まで使い、ゲリラ戦をくりひろげてソ連と対抗し、焦土になりながらも、最終的に独立を保った。そういう厳しい戦いの中で英雄となったのが、シモ・ヘイヘだったのだ。

いまフィンランドは福祉が充実し、テクノロジーが発達した豊かな国として知られている。その背景にこのような凄惨な戦いがあったことをしっておきたい。

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