衝撃のアンチエイジング「若者の血を輸血して若返る」がビジネスになろうとしている

不老不死を望む人が果たしてどれだけいるかは分かりませんが、アンチエイジングとなれば話は別でしょう。

「若返り」──その核心を求めて、世紀をまたいだ科学者たちの研究に一つの答えが。そしていま、新たなビジネスが生まれようとしている、とアメリカの科学誌は伝えています。

81万円で若者の血を輸血
新たな輸血ビジネスが誕生

35歳以上の人であれば若者の血液を輸血する」。カリフォルニア州モントレーに拠点を置くスタートアップ企業Ambrosia社は、臨床実験ではあるものの、8,000ドル(約81万円)で希望者に輸血を行うプログラムを計画しているそうです。

「MIT Technology Review」が報じた内容によれば、同社は16~25歳の若者から採血した血液を週に1回、4週間に渡って輸血するプログラムを600人の被験者に対して行う計画を進行中。

これに対し「Science」は、調査データが開示されない可能性があるにもかかわらず、参加費を要求するのは金目当ての商業的なもの。と一部の研究者たちからの批判の声も多い事実を伝えています。また、世界180カ国に展開するコンシューマー・グローバル企業のNovartis社老化研究所のデビッド・グラスエグゼクティブディレクターも、「この試験にはプラセボを試す対照群が存在しないため、効果を判別することは不可能に近い」と否定的。

それでも、Ambrosia社に限らず、アルツハイマーの疑いのある患者に若者からの血液を投与する臨床実験を他企業が行うなど、輸血によるアンチエイジングが、医療ビジネスにおける潮流になりつつあることが分かります。

若者の血液に含まれる物質が
高齢者を若返らせる

では、なぜ若い血が「若返り」をもたらすという定説ができたのか。話を2014年に戻していきましょう。

カリフォルニア大学の研究チームが若いマウスの血液を老マウスに輸血すると、海馬が活性化し記憶力がよみがえり、脳血管の血流も増加。この結果を受けて、空間記憶テストを実施したところ、輸血前に比べ成績が飛躍的に向上。若いマウスの血しょうに含まれる何らかの物質が、脳の神経に作用していることを発見しました。

ほぼ時を同じくして、ハーバード大学幹細胞研究所のエイミー・ウェイジャース教授は、1960年代から行われてきた、若いマウスと老マウスのお腹をくっつけて血液を循環させる(双体結合)による実験で、若いマウスの血液が年老いたマウスの筋肉・心臓・脳の機能を改善する作用を発見。19世紀から続く双体結合が、ウェイジャース教授の発見により、再び脚光を浴びることとなったのが、今から2年前のことです。

アンチエイジング新時代突入?

ウェイジャース教授によると、双体結合させることで血液循環を行った結果、運動などで傷ついた老マウスの筋肉組織の回復速度が飛躍的に増加したのに対し、若いマウスの回復速度は逆に遅くなったそう。

こうした変化を調べるうちに、血中に含まれる「GDF11」と呼ばれるタンパク質が若いマウスには多く、老マウスには少ないことが判明。そこで、若いマウスの血液から採取したGDF11を注射したところ、やはり老マウスは同様の回復力を示したそうです。つまり、年齢とともに減少するこのGDF11の量を増やすことができれば、若返りの効果が期待できるのではないか?と。

それでも、GDF11のアンチエイジング効果に疑問を投げかける研究者も。Novartis社の科学者らは、ウェイジャース博士の研究結果に矛盾するデータを公開して対抗。GDF11が加齢とともに増加することや、骨格筋の再生を妨害していることなど、真っ向から反対する見解を示しています。

いずれの研究もいまだ確実視できる結果は出ておらず、若い血液と若返りとの因果関係を決定的に証明するには至っていない。というのがこの話の結論。それでも、新時代のアンチエイジングが、美容法や食習慣、薬によるものではない、より直接的なアプローチに突入しようとしていることを思うと、ちょっと怖くなってきませんか?

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。