Z世代の心を掴む「アンチマーケティング」ペプシコのTikTok戦略から学ぶ、共感獲得の秘訣
情報過多な現代社会。消費者は、日々無数の広告や情報にさらされている。特に、デジタルネイティブとして育ち、従来の広告手法に飽き飽きしているZ世代の心を掴むのは至難の業だ。彼らにとって、広告は「スキップ」の対象でしかない。
では、そんなZ世代の心を捉え、ブランドと心を通わせるにはどうすればよいのか。
「食の楽しさ」を共創する
TikTok発のブランド体験
デジタルマーケティングに精通する「Marketing Dive」が興味深い記事を紹介している。「PepsiCo Foods US(以下、ペプシコ)」が仕掛けるZ世代向けのフードエンターテインメントチャンネル「FLVR」の事例だ。
ペプシコは、Z世代にとってもっとも身近なプラットフォームの一つであるTikTok上に、「FLVR」という独自のブランドチャネルを開設。1750を超える動画コンテンツを配信し、世界中のZ世代と繋がりを持つ。
FLVRの特徴は、商品を直接的に宣伝するのではなく、「食の楽しさ」をテーマに、Z世代の感性を刺激するコンテンツを、彼ら自身の手によって共創している点にある。YouTube、Instagram、Amazon FireTV、FLVR公式サイトなど、多様なプラットフォームへの展開も、その共感を増幅させている。
Z世代の心を掴む
「アンチマーケティング」の秘訣
FLVRに見られる、ペプシコの「アンチマーケティング」戦略。それは、従来のマーケティングの常識を覆す、3つの要素から成り立っている。
1つは「オーセンティシティ(信頼性)」の重視。記事によると、Z世代は1日平均6.6時間もメディアに触れているという。情報過多な環境にいる彼らは、嘘や偽りを瞬時に見抜くため、企業が発信する情報は透明性が高く、共感できるものでなければならない。
2つめは、「マイクロインフルエンサー」との協働だ。影響力の大きなインフルエンサーではなく、ニッチな分野で熱狂的なファンを持つマイクロインフルエンサーを起用することで、よりターゲット層の共感を呼び、コミュニティへの帰属意識を高めているのだ。
そして3つめは、「デジタルクックブック」戦略。レシピ本をデジタル化するだけでなく、TikTokやAmazon FireTVなどのプラットフォームと連動させることで、Z世代にとってより身近で利用しやすいコンテンツ体験を提供している。
共感資本主義時代における、
ブランドコミュニティの創造
ペプシコの事例は、Z世代が求めるマーケティングの本質を如実に物語っている。それは、押し付けではなく、共感に基づいたブランド体験からなるもの。
近年の“共感資本主義”の台頭に見られるように、消費者はもはや商品やサービスの機能的な価値だけで購買決定をする時代は終わりを迎えている。企業理念やブランドの持つストーリーに共感し、その価値観を共有できるかどうかが、今後のブランド選択における重要な指標となるだろう。
FLVRは、単なるマーケティングキャンペーンではなく、ブランドの枠組みを超え、食を楽しむZ世代のコミュニティとして機能している。これは、これからの時代のブランド構築における、一つの理想的なモデルと言えるのかもしれない。