悲劇から未来へ。アシッド・アタックの被害者がスキルをアピールする就活サイト
「アシッド・アタック」という言葉を知っていますか?直訳して「酸攻撃」とも呼ばれるこの行為は、硫酸などをかけて顔や身体に重いヤケドを負わせるというもの。DVやストーカー、妬みなどによって行われるおぞましい傷害行為のひとつです。
被害者は心にまで深い傷を負い、 また時には傷のせいで偏見や差別を受けることすらあります。
そんな彼らが再び自信と生きがいを取り戻せるよう、被害者の就職を支援しているNGOが「MAKE LOVE NOT SCARS (傷ではなく愛を)」。
被害者と企業の架け橋に。
彼らが開いたこのサイトは、アシッド・アタックの被害者と企業との貴重な窓口となっています。
「サバイバーズ」の欄には丸く切り抜かれた被害者たちの顔写真が並び、クリックするとプロフィールやスキルについて閲覧できます。なかには被害者がお気に入りのポエムを読む動画などもあり、親しみやすさがあるのも特徴。
被害者の約8割が女性とも言われるアシッド・アタックですが、サイトの中には男性の姿もあります。マーケティングのプロやビューティシャン、ダンサーなどの職業だけでなく、好きなもの、趣味、経歴もとにかくバラエティに富んでいて、まさに十人十色です。
「クリックして雇う」で
一瞬でコンタクト。
そんな彼らを見て「雇用したい!」と思った企業は、その場でコンタクトを取ることができます。写真の下の"Click to hire"(クリックして雇う)のボタンから一瞬で連絡できるのです。
「雇うことはできないけど、この活動を広めたい」という人は、その下のシェアボタンでSNSに拡散することでサポートできるという仕組み。
顔を出してまで込めた
強い想い。
このサイトで一番注目すべきは、被害者たちが顔を堂々と出して仕事を探しているところ。ここには、強い想いが込められています。
「顔で判断して欲しくない」という理由だけならば、写真ナシの掲載も可能です。しかし彼らは「顔も見て欲しい」という確固たる想いを持っていると言います。
ビューティストのMamtaさんは、動画の中でこう語ります。
「私はここでアピールした内容を、ただ紙に書いて送るという手段も選べたかもしれません。でも私はあなたたちに、顔も見て欲しかったのです。私がビューティシャンっていう仕事でみんなを美しくするとき、あなたたちが目をそらすことのないように」
TwitterやFacebookにも「#SkillsNotScars」のハッシュタグで動画が公開されています。可愛らしいメイクアップの紹介動画などを投稿し、それに酸の売買規制などを関連づけて訴えているのです。
「酸は、今日紹介した赤いリップと同じくらい手軽にお店で買うことができる。これがアシッド・アタックの被害者が増え続けている原因のひとつなの」
実際、アシッド・アタックの多いインドでは酸の売買に規制がかけられ始めています。辛い経験が他の誰かへと繰り返されぬよう、彼らは「傷を含めた自分自身」をもって、続いていく人生と、増え続ける被害に勇敢に立ち向かっているのです。
傷だけでなく、自分自身すべてを見て欲しい。
そんな想いを支援するこの取り組みは、多くの人々の心を動かし続けています。